特定非営利活動法人ちゃいるどネット大阪

  • トップページに戻る
  • ちゃいるどネット大阪とは?
  • 講座・研修のご案内
  • 研究プロジェクト
  • 情報誌・出版物
  • おすすめ絵本
  • いま、どんなきもち教材
ホーム>おすすめ絵本
おすすめ絵本

おすすめ絵本

『どっち?』

『どっち?』

1,320円

絵本は捉え方がひとそれぞれで、正解も間違いもないところが魅力の一つだと思います。『どっち?』(作・絵:ひろたあきら/岩崎書店)どっちを選んでも正解も間違いありません。
「たこさんっウィンナー」と「たまごやき」。お弁当に入ってたら、テンションあがるのどっち?
子どもたちは、たこさんウィンナーに手を挙げる子が多いですが、ぼくはたまごやき。
「だんごむし」と「かたつむり」。生まれ変わるのならどっち?
これは2つに分かれます。ぼくは断然だんごむしですが。
「カンガルーのポッケ」と「コアラのせなか」。寝たいのどっち?
どっちも臭そう。悩みます。
ページが進むごとに究極の選択になっていきます。
「肩からサボテンがはえてくる」と「腕からきのこがはえてくる」どっち?
おおいに悩みます。
「人魚」と「半魚人」、一緒に泳ぎたいのどっち?
以外に半魚人が多かったりします。
「鼻がゾウ」と「首がキリン」、進化するのはどっち?
う~ん。ぞうだと副鼻腔炎になりそうな気がする。キリンかな。
ページをめくるごとに、子どもも大人も大興奮です。考えてみれば、今の時代は、子どもも大人も与えられることが多くて、自分で選ぶことは少ないかもしれません。
自分で選ぶことは、自発的に生きる第一歩。っ子の絵本は本来の生きる力をくすぐってくれるような気がします。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『しめしめ』

『しめしめ』

1,540円

おはなしの終わり方は、どちらかというとハッピーエンドな絵本が多いですが、「そんなのあり?」というようなとんでもない終わり方をする絵本もあります。ところが、これが子どもたちには大受けだったりするんです。『しめしめ』(作:丸山誠司/光村教育図書)がまさにそういう絵本です。
ハチが蜜を吸いに来ました。ハチのうしろにはカエルが「しめしめ、たべちゃうぞ」と待ち構えています。カエルのうしろにはヘビがヘビのうしろにはハゲタカが、ハゲタカのうしろにはティラノサウルスが待ち構えています。
そのうしろには鬼がいて、ティラノサウルスのしっぽをつかまえます。するとティラノサウルスは「ギャー」と叫び、驚いて逃げようとします。それに驚いたハゲタカも、ヘビもカエルもハチも、「にげろ、にげろ」の大騒ぎ。
大慌てのハチは、間違えて鬼のお尻を刺してしまいました。みんな、ハチに刺されないように逃げて誰もいなくなり、「しめしめ、これであんしん」と、ハチがゆっくりと花の蜜を吸いに来ました。
子どもたちはここで、ホッとするのですが、最後のページは、その花がパクっと閉じてハチが食べられてしまうのです。
子どもたちは一瞬、声がなくなりますが、なぜか「もう1回よんで」という声がとても多い絵本なのです。
子どもたちの中には、「これで、誰にも見つからんと蜜が吸えるな」という子もいれば、「チューリップやったんや」という子もいます。
予想外のお話の終わり方は、子どもたちの予想外の反応がみられたりします。これも読み聞かせの楽しみのひとつですね。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『ゆうたとかぞく』

『ゆうたとかぞく』

990円

子どもが大喜びする絵本は、大人も大喜びかというと、そうとは限りません。逆に、大人が食い入るように見る絵本は子どももそうかというと、そうではないことも多いです。そんな中でも子どもも大人も両方が楽しめる絵本がいくつかあります。子育て支援センターや、保育園・幼稚園の参観日に子どもと保護者さんが一緒に楽しめます。
『ゆうたとかぞく』(作:きたやまようこ/あかね書房)もそのうちのひとつです。
犬のじんぺいが家族を紹介していきます。おとうさんのゆういちさん、おかあさんのひろみさん、ゆうた、ゆうたのいもうととゆうこ。それぞれ、自分との関わりを踏まえて簡単に紹介します。簡単なしょうかいではありますが、それぞれの特徴をとらえていて、どのページも笑いを誘います。子どもたちはページをめくるたびに笑い声が大きくなり、保護者さんたちはクスッと笑います。
最後は、家族全員が登場して犬のじんぺいがこう言います。「みんな、いっしょにいるのがすき。いつもおれがまもってる。みんな、わらってそばにいろ。」子どもも大人も、満ち足りた笑顔になります。
しあわせの原点は「家族」、ということを子どもたちと一緒に感じることができる絵本だと思います。この絵本は人気が高く、多くの人が知っていると思いますが、対象やシチュエーションを考慮して読むと、新たな発見があるのではないでしょうか。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『おじいちゃんの くしゃみ』

『おじいちゃんの くしゃみ』

1540円

絵本のストーリーには、作者の体験が反映されている場合があります。今回ご紹介する絵本もそのひとつです。『おじいちゃんの くしゃみ』(作:阿部結/福音書店)
女の子がお絵描きをしていると、おじいちゃんが「あーっちょん!」と大きなくしゃみをしたので、紙は吹き飛んでぐちゃぐちゃになってしまいます。女の子は自分の作品が台無しになったので、カンカンになって怒ります。おじいちゃんは、平然と「おじいちゃんのくしゃみは世界一なんだよ
」と言ってのけます。おじいちゃんが「あーっちょん!」とくしゃみをすれば、木に実ったりんごを地面に落とすことができるそうです。また、女の子を抱っこして「あーっちょん!」やれば遠い所まで飛んでいけるのでした。「だったら、雲の上までつれていってみてよ」と女の子は挑戦的です。「じゃあおいで」とおじいちゃんは女の子を抱っこするのですが、くしゃみが出ません。女の子が怒って部屋を出ていこうとする時、「あーっちょん!」という声とともにおじいちゃんはひとりで空高く舞い上がりました。「もう!」と再び怒る女の子。
でもおじいちゃんのことが大好きなのですね。最初に女の子が紙に描いていたのはおじちゃんの顔でしたから。
作者の阿部結さんのおじいちゃんがモデルだそうです。実施におじいちゃんのくしゃみは「あーっちょん!」と聞こえるそうです。きっとこの絵本のようなちょっととぼけた憎めないおじいちゃんなのでしょう。作者のおじいちゃん愛が伝わってくる絵本です。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『かける』

『かける』

1,430円

食べ物の絵本を読むと、子どもたちは大喜びです。しかも、絵本を読みながら、子どもたちとやりとりができる絵本もあります。
『かける』(作:はらぺこめがね/佼正出版社)
表紙の絵は、おいしそうなカレーです。ご飯にかけます。とにかくかけておいしくなる食べ物がいっぱい出てきます。
まずは、ケチャップがちゅるるるる~。子どもたちに「何だろうね」と聞くと、「オムライス!」と答えてくれる子が多いです。ページをめくると、見開きいっぱいに美味しそうなオムライスが出てくるので、子どもたちは大喜び!
次はしょうゆがちょろちょろぴゃっぴゃっ。子どもちは「おすし」と言う子が多いですが、ページをめくるとお豆腐でした。でもお豆腐大好き!と言ってうれしそうにする子が多いです。おいしそうに見える絵だから、なおさらです。ふりかけ、生卵、納豆をかけるページもあります。玉子かけごはん、納豆ごはんが登場します。子どもたちに、どれが好き?と聞くと、断トツで人気があるのは、ふりかけごはんです。次いで人気なのは、ぼくの住む三重県では、納豆ごはんです。玉子かけごはんが大好きなぼくとしては、忸怩たる思いです(笑)。子どもたちは高級料理ではなくても、手をかけた料理ではなくても、ふりかけごはんがごちそうなのですね。
食べ物を美味しく食べることで、幸せを感じ、生きていることを実感できますね。どうかすべての家庭の食卓がしあわせでありますように。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『ねずみのえんそく もぐらのえんそく』

『ねずみのえんそく もぐらのえんそく』

1,320円

絵本作家は、いたるところに工夫をして読者を楽しませてくれます。ストーリーの展開にワクワクする絵本もあれば、絵の緻密さに感心する絵本もあります。
今回ご紹介する絵本は、絵本ならではの「見せ方」にアイデアがあります。『ねずみのえんそく もぐらのえんそく』(作:・絵:藤本四郎/ひさかたチャイルド)
ねずみ園のねずみたちと、もぐら園のもぐらたちが、それぞれ遠足に行く様子を描いた絵本ですが、表紙の絵を一目見て分かるおように地上ではねずみたちが、地中ではもぐらたちが歩いています。まるで空間を輪切りにしたような見せ方は現実世界では見ることができない、絵本ならではのアイデアだと思います。地上のねずみと地中のもぐらのそれぞれが、同時刻に何が起こっているのかが分かるため、楽しみが倍増します。
例えば、地上ではねずみが木の蔓でブランコをしているかと思えば、地中ではもぐらが木の根っこでブランををしていたりします。よ~く見てみると、地上と地中での出来事が微妙に影響し合っていることが分かります。地上でねずみが蹴ったどんぐりが穴に落ちたら、地中のもぐらの頭にコツンと当たったり。あるいは、地中のにあるヘビのしっぽをもぐらが引っ張ったら、驚いたヘビの顔が地上に出ているので、ねずみたちがびっくりしたり。
こうして、お互いが徐々に近づいていく様子にワクワクします。
空間を輪切りにしたような見せ方だからこその楽しみ方ですね。
最後に、同時にサツマイモを見つけた地上のねずみと地中のもぐらは、どうなったのかは、読んでからのお楽しみ。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『100ぴきかぞく』

『100ぴきかぞく』

1,540円

絵探しの絵本の中で、何度も読みたくなるうえに何通りもの楽しみ方ができる絵本があります。『100ぴきかぞく』(作:古沢たつお)/大日本図書)
題名通り、100ぴきのネコの家族の絵本です。おとうさんとおかあさんと98ひきの子どもたちがいます。朝は大きな広い洗面所で100ぴきが集まっています。歯磨きをする子、顔を洗う子、トイレに行く子など様々。「おにぎりを食べているモグくんがいるよ」という文章があるので、子どもたちは、モグくんをさがします。
次の朝ごはんです。ごはんを大盛りにしている子もいれば、後ろを向いてポテトチップスを食べている子もいます。「ペロペロキャンディーをなめているペロちゃんはどこかな」とあるので、子どもたちは、ペロちゃんをさがします。
読み聞かせの最中は、子どもたちはいっせいに絵本の近くに寄ってきて、モグくんやペロちゃんをさがします。読み聞かせ終了後は数人がこの絵本を広げ、モグくんやペロちゃんを何度も見つけます。すると、例えばポテトチップスを食べていたネコが、前のページでも、ポテトチップスを食べているのを発見する子もいます。
そうなると、他のネコたちに興味が出てきて、別のネコをたどってページをめくりだします。
実は、裏表紙に100ぴきのネコたちの名前がすべて書いています。それおぞれ違う性格だけど、ごちゃませで一緒にいることの楽しさを、子どもも大人も感じる絵本だと思います。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『わゴムはどのくらいのびるのかしら?』

『わゴムはどのくらいのびるのかしら?』

1,430円

今回ご紹介する絵本は、47年前に発行された絵本です。初版以降、28回も版を重ねて今に至ります。
『わゴムはどのくらいのびるのかしら?』(文:マイク・サーラー、絵:ジェリー・ジョイナー/ほるぷ出版)
ある日、ぼうやは輪ゴムがどのくらい伸びるか、試してみることにしました。ベッドの端に輪ゴムをひっかけて、ドアを開けて外に出ます。ここまでは想像できるのですが、だんだんと想像の範疇を超えていきます。自転車のサドルに輪ゴムをかけてくたびれるまで走ります。さらにバスに乗っても輪ゴムはまだのびます。そして汽車に乗ってもまだのびます。
そして、飛行機に乗っても、まだ輪ゴムはのびるのです。船に乗ってよその国に来ても輪ゴムはまだまだのびます。ついには、ロケットに乗って月まで行っても、まだのびています。月を歩きだそうとして途端、とうとう輪ゴムはボーンとはねてぼうやはベッドに逆戻り。ページをめくるたびに子どもたちは「え~っ!」と言いながら楽しんでくれます。
きっと47年前も世界中の子どもたちが、「次はどうなるんだろう」と思いながら、ページをめくると「え~っ!」と言いながらこの絵本を楽しんだのでしょう。そう考えると、子どもたちの好奇心や楽しむ心は、今も昔も変わっていないということです。そのことを、長年人気が絶えない絵本が証明してくれています。
変わらないものを大事にしたいですね。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『夏がきた』

『夏がきた』

1,650円

エアコンが効いた部屋の暑さをしのぐのが、最近の夏の過ごし方になっています。猛暑の日は、外出を控えるときもあります。だからこそ、昔ながらの日本の夏をたっぷりと感じられる絵本を紹介します。
『夏がきた』(作:羽尻利門/あすなろ書房)
段々畑の山間にある木造の家に住む少年。朝、起きたら父さんは、園側の風鈴をとりつけています。お母さんがいれてくれるお茶は、麦茶に変わっています。コップの麦茶をグビッと飲み干し、扇風機の風を受けながら朝ごはんです。おじいちゃんはランニングシャツ姿で、うちわを使っています。そうこうしていると、友だちが誘いに来ました。開け放した玄関から「あーそーぼ」と声をかけます。もう一人の友だちを誘って、3人で海に向かいます。4人目の友だちの家がやっている海の家の開店を手伝うためです。スイカとおにぎりを頬張りながら休憩します。激しい雨が降っても友だちと一緒なら楽しい。
雨があがって、お礼にもらった花火セットを手に、走って家に帰ります。暑い中、動き回って疲れたのか、縁側でお昼寝です。枕代わりの座布団は、おばあちゃんが当ててくれたのかしら。
空の青、田んぼの緑、雲の白など、夏らしい風景は、作者の住む、四国の豊かな自然を描いているいるのだと思います。
探せば、まだ日本の夏はありそうです。今もきっと、夏の到来に期待し、興奮する子どもたちがいることを願っています。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『たべて うんこして ねる』

『たべて うんこして ねる』

1,650円

今回、ご紹介する絵本はこれです。『たべて うんこして ねる』(作:はらぺこめがね)/岩崎書店)
著者のはらぺこめがねさんは、食べることが大好きで、「食べ物と人」をテーマに活動している夫婦ユニットです。絵本は、題名通り「たべて、うんこして、ねる」内容です。
3人家族の男の子がたべて、うんこし、ねる。
3人家族に赤ちゃんが加わって4人家族になりました。ママも赤ちゃんも食べて、赤ちゃんがうんこしてその横でお兄ちゃんがねる。飼い猫も、たべて、うんこして、お兄ちゃんや妹と折り重なってねる。お兄ちゃんは、学校でたべて、うんこして、帰り道に原っぱでねる。引っ越しをすることになったのか、お兄ちゃんと妹は、友だちとのかなしい別れ。それでもたべて、うんこして、ねる。そして、朝が来て太陽が昇り、朝ごはんを”食べるんだ”というおはなしです。とてもシンプルです。兄弟が、たべて、うんこして、ねる、を繰り返しながら、知らず知らずに成長しているのもおっもしろいです。絵本の帯に、著者のはらべこめがねさんの思いがつづられています。一部を紹介します。
「悲しいとき、楽しいとき、怒ってるときですら、腹は減るし、うんこもする。眠たくなったら寝て、また朝を迎えるねん。ほんまのところ、それができてりゃ充分とちゃいまっか」”生きている”を実感できる絵本です。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『ゴリラのくつや』

『ゴリラのくつや』

1,540円

絵本には、瞬間的に大笑いして楽しめる絵本と、瞬間最大風速は高くないけど、何度も見たくなる絵本があります。今回は、後者の絵本を紹介します。
『ゴリラのくつや』(作:谷口智則/あかね書房)
ゴリラのとうちゃんは、森の奥でくつやをしています。お客さんのリクエストに応えてつくるオーダーメイドのくつやです。チーターには速く走れるくつを、シロクマには氷の上でもつめたくないくつを、キリンには足が長く見えるくつなど、それぞれのリクエストに応えるので、大人気です。そんな様子を息子ゴリラが木の陰から、うらやましそうにじっと見ています。ある時、思い切って息子ゴリラがとうちゃんに言いました。「空を飛べるくつがほしいんだけど」。とうちゃんは、しばらく考えてから、くろいくつに絵の具でペタペタ色を塗り始めました。青い空に雲が浮かんでいるような絵です。そして、とうちゃんは息子ゴリラを丘の上に連れていき、自分の頭の上に持ちあげて、思いっきり丘を駆け降りると、空を飛んでいるみたい。そんなとうちゃんは、いつもはだしです。それぞれのシーンの解釈は、読者に委ねられています。
ずっとはだしでいるのは、自分のこと以上に、人を喜ばせたいのかもしれません。それでいて、ちゃんと家族のことも顧みているように思います。
いろいろなことを感じながら、何度も何度も読み返してみてください。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『おいしそうなしろくま』

『おいしそうなしろくま』

1,540円

食べ物に関する絵本はたくさんあります。食べ物自体がおいしそうな絵本もあれば、食べる人の表情がおいしさを引き立たせているという絵本もあります。
今回はその表情を見ていると、たべることってしあわせだなあと思わせてくれる絵本を紹介します。
『おいしそうなしろくま』(作・絵:柴田けいこ/PHP研究所)くいしんぼうのしいろくまは食べるだけでは飽き足らず、食べ物の中に入ってしまいます。ご飯の中に埋まったそろくまは、とても満ち足りた表情です。次に入ったのは、なめこと豆腐の味噌汁。温泉にはいっているみたいで気持ちよさそう。クリームコロッケの中に入ると、とろ~んととろけちゃいそう。うどんのお揚げは座布団代わり。心地よさそう。肉まんの中に入って、顔だけ出すと、あったかくて気持ちよさそう。パンの中にも入ります。チョココロネが一番のお気に入り。穴の中に頭から入って、チョコをすすってからパンを食べます。パンからお尻だけ出ている姿がたまらなくかわいいです。
どのページもしろくまの表情はと~ってもしあわせそうです。この絵本を子どもたちに読むと、ページをめくるたびに「はぁ~」と思わず声が漏れて、しあわせそうです。「おいしそう」と思うだけで、しあわせになれるうのですね。
そうだとしたら、毎日の食卓では毎回しあわせになれます。「おいしいもの」を食べるからしあわせなのではなく、「おししそう」と思い、「おいしく」食べるから、しあわせなのでしょう。
是非、食卓で家族全員のしあわせな時間をつくってください。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『ルドルフ赤い鼻のトナカイ』

『ルドルフ赤い鼻のトナカイ』

1,870円

今回はクリスマスの絵本を紹介します。『ルドルフ 赤い鼻のトナカイ』(作:ロバート・L.メイ、イラスト:アントニオ・ハピエール・カパロ/子どもの未来社)「まっかなお鼻のトナカイさんは♪」と歌われる「赤鼻のトナカイ」のもとになったおはなしです。
おはなしの作者は出版社に勤務する男性、ロバート・L.メイ。1983年、当時アメリカは金融恐慌から始まった不景気に苦しんでいました。ロバートの生活も大変で重い病気で苦しんでいる妻エヴァンに、満足な治療を受けさせてあげられませんでした。4歳の娘バーバラは、いつも寝込んでいる母親の姿を見て、しょんぼりしていました。ある日、バーバラは親父ロバートに「どうして私のママは観ん後違うの?」と聞きました。
寂しい表情で問うバーバラを前に、何とか楽しく元気が出るおはなしはできないかと考えました。同時に「みんなと違う」という一言が、ロバートの頭の中をぐるぐると巡りました。というのも、ロバートは幼い頃、体が弱くて痩せていたため、みんなにいじめられていたのです。
そして、即興で作ったおはなしが「みんなと違う」ことで人の役に立った『ルドルフ赤い鼻のトナカイ』です。ロバートは後日、このおはなしを手作りの本にまとめてクリスマスプレゼントとして娘バーバラへ贈りました。
その後、ロバートが会社でこのおはなしを披露したら大喝采を浴び、出版することになり、世界中で大ヒットしました。そんな背景を想像しながらこの絵本を楽しんでください。
メリークリスマス!

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長しんちゃん

『みらいのえんそく かざんのしまへ』

『みらいのえんそく かざんのしまへ』

1,540円

やさしい気持ちになれる絵本を紹介します。『みらいのえんそく かざんのしまへ』(作:ジョン・ヘア、文:椎名かおる/あすなろ書房)
月へ遠足に行った1作目に続き、シリーズ2作目は火山の島へ遠足に行くお話です。火山の島にヘリコプターで降り立つと、流れるマグマや、吹き出る間欠泉に子どもたちは大喜び。でもひとりだけ花を摘むのに夢中になっている子がいます。先生にも1本あげまた。その子はひとりでそれをとりに行くと、噴火口にはマグマの怪物親子がいました。怪物が落ちている花をつまむと、暑さで焦げてしまいます。哀しそうな顔をしている怪物に、その子は溶岩を使って花瓶を作ることを教えてあげました。これで花は枯れないので、マグマの怪物親子はごきげんです。
そういうしてると、先生がヘリコプターで迎えに来てくれました。摘んだ花を全部、マグマの怪物親子にあげたその子は、先生は花を1本上げました。それは遠足の途中で、その子が先生にあげた花です。花の存在が、やさしさを強調しているということもありますが、このほっこり感はなんでようか。
実は、その子も先生も自分以外の人に喜んでもらおうと思って、花をあげています。これがやさしさの正体かもしれません。帰りのヘリコプターで耐熱服のヘルメットを脱いだその子は、男の子でした。花が好きなのは、女の子だけではありませんね。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『よるのおと』

『よるのおと』

1,540円

本来、人の感覚は固有のものです。言葉で説明しようとしても、人に伝えることが難しい場合が多いです。しかし、絵本はそれを伝えることができる可能性があります。その可能性をおおいに感じる絵本を紹介します。『よるのおと』(作:たむらしげる/偕成社)
おじいちゃんの家の前には池があります。夜、男の子が、その池のほとりを歩いて、おじいちゃんの家に行こうとしています。家に着くまでのほんの数十秒の間に、さまざまな音が聞こえてきます。「リリリリリー」という虫の鳴く音、「クワックワッ」というかえるが鳴く音、「パチャパチャ」という鹿が水を飲む音も聞こえてきます。音がないのに、絵から音が聞こえてきそうなシーンもあります。とても幻想的な絵です。
実は、作者のたむらさんは9歳の時に、松尾芭蕉の「古池や 蛙飛び込む 水の音」という句を聞き、その瞬間、「バシャッ!」という音が頭の中に響いたそうです。同時に、植物が生い茂り虫や動物たちが、川を越え山や空を超えて、宇宙の銀河へ広がっていくというイメージが広がったようです。
その日、たむら少年は自分がこのすばらしい宇宙に存在する不思議に気づき、世界が今までとは少しちがって見えた、とのこと。この感覚は、たむら少年が感じた固有のものだけど、後年、絵本として表現しくれたおかげで、ぼくたちは、自分自身が宇宙に存在する不思議な感覚を、夜の片隅のシーンから共有することができました。絵本ってすごいですね。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『おじいちゃんとパン』

『おじいちゃんとパン』

1,078円

食べ物の絵本を紹介します。
『おじいちゃんとパン』(作:たな/バイインターナショナル)
甘党のおじいちゃんが、食パンにいろいろな甘いものをのせて食べます。孫の男の子にそれらのパンの説明をしながら食べます。ジャムをいっぱいぬるときは、先にバターをぬってからです。トーストしてから、あんこをぬって、きなこをかけるときもあります。おじいちゃんはつぶあんが好きです。マシュマロをのせるときもあります。トーストするときは、すぐに焦げるから、おじいちゃんは焼け具合を見張っています。そしておじいちゃんは、孫の男の子にも甘いパンを分けてくれます。この子が高校生になっても結婚して子どもができても、やっぱりおじいちゃんは甘いパンが好きで、分けてくれます。孫の男の子は大人になってから、気が付くのです。本当は甘いぱんより、それをぺろりと対ベルおじいちゃんを見るのが好きだったことを。
冒頭で、「食べ物の絵本を紹介します」と書きましたが、修正します。「食べ物を通じたおじいちゃんの絵本を紹介します。」
食べ物はつくってくれた人や一緒に食べた人の様々なことを思い出させてくれます。子どもたちが今、食べている物もいつかきっと思い出になることでしょう。
だとしたら、家族で一緒に食べる時間を大事にしたいですね。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『ねこいる!』

『ねこいる!』

1,595円

絵本を読むときに、「この思いを伝えたい」とか「こういう気持ちに気づいてほしい」など、大人の意図が優先することが多々あります。悪いことではないですが、いったん、その気持ちを切り離してみませんか。そして、ただ、ただ、子どもたちと楽しむことを満喫してみませんか。
そういうことを味わうための、とっておきの絵本があります。
『ねこがいる!』(作:たなかひかる//ポプラ社)ねこがいるか、いないか。ただ、それだけの絵本です。
しかし、じっくりと絵探しをする絵本ではありません。ねこの登場が衝撃的です。雷が落ちたように「ババーン!」と登場するのです。
次のページは、パンが出てきます。どこにもねこがいないと思いきや、思わぬところから、「ババーン!」と登場!お次は、女の子が笛を吹いています。どこにもねこの気配がないけど、これまた思わぬところから、「ババババーン!」と登場!
次は体操選手が、飛び箱を飛ぶために助走しています。踏み切り板を踏み切った瞬間に「ババババーン!」。着地した瞬間に!「ババババーン!」。ついでに、ねこ以外の動物も登場。
もうねこはいないと思っていたら、え~!と思うようなところにいました!
最後はさすがにいないかな?いるかな?リズミカルで、迫力ある絵が子どもたちを笑いの渦に誘います。
ただただ子どもたちと一緒に笑う。これって、子どもにとっても、大人にとっても素晴らしい時間だと思います。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『ふしぎなともだち』

『ふしぎなともだち』

1,650円

友だちと一緒に何かを「する」という関係も大事だけど、一緒に「いる」という関係も大事なんだなと、感じさせてくれる絵本を紹介します。
『ふしぎなともだち』(作:たじまゆきひこ/くもん出版)実話をもとにしたおはなしです。
島に転校してきた小学校2年生のおおたゆうすけくんが、同級生で自閉症の男の子・やっくんと友だちになっていく過程を描いています。やっくんは、ひとりごとのような変なことを言ったりするけど、クラスのみんなは気になりません。授業中に部屋を出て言ったら、誰かがついていって、いつのまにか教室に戻っています。クラスのみんなは遊ぶ時も勉強する時もやっくと一緒です。最初は戸惑っていたおおたゆうすけくんも、いつしかみんなと同じようにやっくんに接するようになりました。
卒業式では、涙ぐんでいる先生をやっくん特有の表現で慰めます。みんなはそんなやっくんのやさしさを日常の随所で感じています。
中学校の入学式ではやっくんのひとりごとをやめさせようする先生を、クラスのみんなが止めました。やっくんが暴れ出すのを知っているからです。おおたゆうすけくんとやっくんは、大人になって島で働き始めました。おおたゆうすけくんが、仕事で失敗をして落ち込んでいたらやっくんが特有の表現で慰めてくれました。
一緒に「いる」。それはお互いを認め、許し合っているからこそ、できるのだと思います。そんなやさしい関係があちこちで育まれることを願っています。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『ゆき ゆき ゆき』

『ゆき ゆき ゆき』

990円

子どもの頃、雪の結晶を見て、感動したことがあります。子どもだったぼくは、雪が降り始めたので、大喜びで外に出て、ひたすら積もるのを待っていました。ふと、降った雪がセーターの袖口についたとき、一瞬、小さいけど雪の結晶が見えたのです。興奮しました。もっと結晶を見ようと、地面に落ちた雪を見ても、見えません。降っている途中の雪を必死で見ても、結晶は見えませんでした。
そして空を見上げると、雪の渦に巻き込まれていくような不思議な感覚でした。大人になってから、寒い朝、車のフロントガラスに雪の結晶が付着しているのを見ると、そんな子どもの頃の思い出が蘇ってきます。
今回は、雪のお話をご紹介します。『ゆき ゆき ゆき』(作:たむらしげる/福音館書店)冬の空の雲の中で、雪の赤ちゃんが生まれるとろから始まります。雪の中でだんだん大きくなって、雪の結晶になります。
そして、数えきれないほどの雪が舞い降りてきます。男の子は、その雪で雪だるまを作りました。夢中で雪だるまを作っている男の子まわりには、ここかしこに雪の結晶が見えます。
雪の結晶が愛おしくなるほどの詩情豊かな文章で綴られています。子どもの頃の自然体験は、体に染み込みます。そして、大人になってから、豊かな時間の中で蘇ります。ぜひ、雪が降ったら子どもたちと一緒に楽しんでみてください。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『パパもママもボクがしんぱい』

『パパもママもボクがしんぱい』

1,430円

親が子どものことを心配するのは当たり前。でも、子どもにしてみたら、何でもかんでも心配されると、時に鬱陶しいと感じることもあります。そんな子どもの気持ちの両方を描いた絵本を紹介します。『パパもママもボクがしんぱい』(作:神山ますみ/イマジネイション・プラス)
男の子は、パパとママがいつも自分のことを心配することに疑問を持ちます。リンゴを切ろうとすると、指を切らないかと心配するパパとママ。自分でちゃんと歯磨きをしているのに、仕上げをするママ。そんなに寒くないのにパパとママは心配。男の子は、ぼくはもう小さい子じゃないのに、と少し苛立ちます。ところが、家族でおばあちゃんの家を訪ねるとき、パパもおばあちゃんに心配されていました。もう大人なのに。おばあちゃんに聞くと、パパは大切な子どもだがら心配するんだと。男の子は、自分はパパとママに大切な子どもだから心配されるんだ、ということがわかりました。
と同時に、これからもず~っと心配されることもわかりました。大人の皆さんは、心配する側と心配される側の両方の気持ちがわかるのではないでしょうか。
年老いた親から、いつまでも心配されると苦笑いしながらありがたいと思いましょう。我が子のことを心配しているときは、自分が子どもの頃に心配されたときの気持ちを思い出してみましょう。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『むれ』

『むれ』

1,100円

・一瞬で子どもたちの目を引くこと。
・複数で楽しめること。
・何度も楽しめること。
・メッセージ性があること。
これらの要素が、全部含まれているえほんがあります。『むれ』(作:ひろたあきら/角川書店)ページをめくるたびに、いろいろな「むれ」がびっしりと描かれています。ひつじの群れ、キリンの群れ、魚の群れ、鳥の群れなど。その群れの中でひとつだけ違うものがあります。
例えば、ひつじの群れの中には、一匹だけ毛がないものがいます。子どもたちは、すぐに探し当てて大喜び。
一瞬で子どもたちの目を引きました。
続いて、キリンの群れの中には、一頭だけ首が短いものがいます。
すでにこの段階で、ほぼ全員が参加し、複数で楽しんでいます。
次の魚の群れのなかには、一匹だけ骨だけになった魚がいます。群れの数が多くなっています。読み進むにつれて、群れの数が増えたり違いが分かりづらくなっているので、もう1回チャレンジしたくなります。
黒いアリの群れに至っては、何度も見てようやくわかる子もいます。そして最後のページは同じアリの群れでも、いろんな形や色をしているアリの群れです。それまでのページでは、違うことがおかしいようなイメージでしたが、最後のページでは、みんな違うというメッセージがさりげなく込められているように思います。
著者は、吉本興業所属のお笑い芸人で、この絵本が処女作品です。お笑い界という群れの中にも、いろいろな人がいるんですね。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長しんちゃん

『ぼくのがっこう』

『ぼくのがっこう』

1,430円

新型コロナの感染拡大で、子どもたちの生活は一変しました。マスクの着用や給食時のアクリル板、あるいは密を避けり、おしゃべりを自制したり、感染症予防のための制約が多くなりました。それでも保育園や幼稚園、小学校の生活を楽しんでくれる子どもたちは多いです。そんなたくましい子どもたちに、さらに楽しい学校生活を想像してもらいたいと思い、選んだ絵本がこれです。『ぼいくのがっこう』(作:鈴木のりたけ/PHP研究所)
いつも通っている学校が、違う学校になっているのです。例えば…、玄関が滝になっている滝学校。下駄箱に鳥が棲んでいる鳥学校。廊下がグニャグニャしている学校。あり得ないけど、楽しそうですね。そして、給食の時間には、巨大コッペパンが出ます。校舎くらいある大きなコッペパンは、好きなだけ食べても大丈夫。先生もバラエティに富んでいます。例えば…、マジックしながら授業を進めるマジック先生。かわいいクマの着ぐるみ先生もいます。教えるのは先生だけではありません。ダンゴムシ集めや、ねりけしづくりの授業は子どもたちが先生に教えます。
後半は、迷路になっている学校や、巨大な船でできている学校に迷い込んだ校長先生を、子どもたちがみんなで探しだします。
絵本を見ている子どもたちも、絵本の中の校長先生を一緒になって探すでしょう。感染症予防をしながらも、学校や保育園、幼稚園は「楽しいところ」と思ってもらいたですね。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『こんには!わたしのえ』

『こんには!わたしのえ』

1,540円

知り合いで絵画教室をしている先生のところに遊びに行った際、「好きに描いていいわよ」と言って、絵を描かせてくれたことがあります。大人になってから絵なんて描いたことのないぼくですが、嬉々としてわけのわからない絵を思のままに描きました。太陽を2つ描いたら、先生が「いいわね~」とほめてくれました。まるでどろんこ遊びをするような感覚で描いた楽しさを、今でも思い出します。
そんな楽しさを、再び味わえる絵本に出会いました。『こんには!わたしのえ』(作:はた こうしろう/ほるぷ出版)女の子が、大きな紙に絵を描こうとしています。太い筆にたっぷり絵の具をつけて、思い切って線を描きます。いろんな色で点を描いたりもします。思いのままに描きます。どんどん描くスペースは広くなっていきます。
時にはまっすぐ描いたり、時には曲がったり、グルグルと円を描いたり、女の子の気持ちのままに描きます。筆からポタポタと絵の具を垂らしながら、走り回って描きます。掌や足の裏にも絵具をつけて描きます。描き切った女の子は、なんとも気持ちがよさそう。それもそのはず、自分の創った世界ですから。
ちなみに、冒頭の絵画教室では、写実的絵には自信があった大人の人が、まったく描けなかった、という事もあるとのこと。「好きに描いていい」と言われ、かえって戸惑ったそうです。絵画教室の先生曰く、「多くの人が、写実的な絵が上手な絵と思っているけど、絵に上手も下手もないのよ」
子どもたちには、思いのままに描く心地よさを、いっぱい感じてもらいたいな~。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『グーチョキパーのうた』

『グーチョキパーのうた』

1,650円

「ケンカはダメ」「差別はダメ」など、正しいことをストレートに言われた時、理解はできるのですが、心の奥底に「それはそうなんだけど…」という思いが残ることはありませんか。そんな時、その正しいことが、例え話や歌で表現されていると、すんなりと受け入れられたりします。
今回、ご紹介する絵本がそれです。『グーチョキパーのうた』(文:趙 博、絵:長谷川義史/エルくらぶ)ページをめくるごとに、じゃんけんのシーンが出てきます。「グーよりつよいのは、パー」。「パーよりつよいのは、チョキ」。「チョキよりつよいのは、グー」。でも、じゃんけんの解説絵本ではありません。伝えたいのは、「みんな つよくて みんな よわい」ということ。続いて、「グーよりよわいのは、チョキ」、「チョキよりよわいのは、パー」、「パーよりよわいのは、グー」。そして、伝えたいのは、「みんなよわくてみんなつよい」ということ。じゃんけんに留まらず、後半には、こんな文章もあります。「みんなちがってみんないい」。「ひとりひとりはみんなひと」。
じゃんけんシーンから、当たり前のこと、正しいことが、自然につながっていきます。さらに、この絵本と同じセリフで、作者の趙博さんが歌を作っています。とても歌いやすく、口ずさみたくなります。きっと、多くの子どもたちが、「みんな つよくて みんな よわい」と自然に口ずさむようになると思います。CDたユーチューブで聴くことができますので、是非、歌いながら読んでみてください。

NPO法人ほがらか絵本畑
理事長 しんちゃん

『ねえねえ あのね』

『ねえねえ あのね』

1,430円

絵がとてもステキで、思わず誰かに紹介したくなる絵本に出会いました。『ねえねえ あのね』(作:しもかわらゆみ/講談社)です。ストーリーはシンプルです。ひよこがねずみの耳元でささやきます。「あのね、ねずみさん、だいすきよ」それを聞いたねずみは、うれしくて飛び上がります。そして、アヒルの耳元でささやきます。「あのね、あひるさん、だいすき」そうやって、リレーのように次々と耳元で「だいすきよ」とささやいていくのです。耳元でささやいている動物たちの表情は、うれしさだけでなく、気恥ずかしさも伝わってきます。見ていていじらしくなってきます。逆にささやかれている動物たちは、一切の疑いを持たずに、素直に耳を傾けている様子が伝わってきます。ささやきを聞いた後の動物たちのうれしさといったら、もう本当にしあわせそう。また、動物たちのちょっとした動きがかわいさを倍増しています。例えば、ひよこがちょっと首をかしげている表情。ネズミが両手を胸で組んでいる様子。うさぎが耳を傾けている表情など、見た瞬間に、胸がキュン!となります。
ストーリーだけで考えると、2.3歳向きかと思われますが、5.6歳でも十分に楽しめます。何より大人が何回も観たくなるくらい魅了されます。
今回の、この絵本のステキさを文章で伝えるのが、とても歯がゆいです。にも関わらずご紹介したのは、とにかく見てほしいです。きっと、虜になりますよ。

NPO法人こどもほがらかワールド
絵本を読む人・しんちゃん

『オレ、ねたくないからねない』

『オレ、ねたくないからねない』

1,760円

赤ちゃんは、眠くなったらグズッたり、泣いたりします。もっと起きていたいのでしょうか。あるいは保育園で、お昼寝の時間になかなか寝ない子がいます。もっと遊びたいのでしょうか。
冬眠を嫌がるカエルもいるそうです。そんなカエルの様子を描いた絵本があります。『オレ、ねたくないからねない』(文:デヴ。ペティ、絵:マイク・ボルト、訳:こばやしけんたろう/マイクロマガジン社)です。
冬を楽しみにしている子どものカエルがいました。冬は、雪あそびがができるし、スケートができるし、あったかいココアも飲めるからです。フクロウが「カエルは冬は寝るんです」と言っても信じません。「お父さんはもう寝る支度をしてますよ」と言っても納得できません。カエルは、ネコのように暖炉のそばであったまりたいのです。ブタのように毛布にくるまってゴロゴロしたいのです。ウサギのように雪で遊びたいのです。
フクロウは、なかなか納得できないカエルに、春が来るまで池の底の泥の中で寝ることを、図解で説明しました。
それを聞いたカエルは茫然とします。フクロウたちを泥の中に誘うのですが、結局は大きな口を開けて能天気に寝てしまいます。
人間の子どもたちも同じですね。この絵本を読んでからは、子どもたちが寝たくないと抵抗している姿を見ると、心の中で「どうせ寝るくせに」と思って、クスッと笑ってしまいます。

NPO法人こどもほがらかワールド
絵本を読む人・しんちゃん

『おれ、ピートくいたい』

『おれ、ピートくいたい』

1,540円

読み聞かせの際、子どもたちに「どんな絵本がいい?」と聞くと、「こわい絵本!」という子がけっこう多いです。こういうとき、子どもたちが想像している以上に、ゾッとさせたり、ほっとさせたりして、期待を裏切りたくなります。ちょうどいい絵本があります。『おれ、ピートくいたい』(作:マイケル・レックス、訳:ひさやまたいち/評論社)。少年ビートが部屋で遊んでいると、モンスターがやってきました。ピートは、自動車あそびをしたいわけではありません。モンスターがしたいことは、「ピート、くいたい!」
でも、おもしろそうだったので、ピートと自動車であそびました。さらに、ピートは海賊ごっこや積み木あそびに誘います。
でも、やっぱり、モンスターがしたいことは、「ピート、くいたい!」そして、とうとうピートを食べてしまうのです。
その後、モンスターはひとりで遊んでみるのですが、ちっとも楽しくありません。そこで、ピートを吐き出し、ピートに謝りました。
さっそくピートは、モンスターをあそびに誘います。でも、モンスターがしたいことは…。これは読んでからのお楽しみ。
子どもたちは、ピートが食べられるシーンでは、「まさか!」という感じで予想を覆されます。最後のシーンで「また食べられる!」と思っていた子どもたちですが…。
予想を覆されたときの子どもたちの感情の揺らぎが取ってもステキです。

NPO法人こどもほがらかワールド
絵本を読む人・しんちゃん

『お持ちのおふろ』

『お持ちのおふろ』

1,320円

お正月には、ほんわかする絵本をどうぞ。ぴったりの絵本があります。『おもちのおふろ』(作:苅田澄子、絵:上垣歩子/学研プラス)。家族でコタツを囲んで読むと、みんなでニタニタできる絵本です。
ある寒い日、2人のおもちがお風呂屋さんに行きます。昭和を感じさせるお風呂屋さんです。番台に座っているのは大根さん。脱衣場には、裸になった白菜さんや、ネギさん、ホタテさんがいます。人参さんはヘアードライヤーを使っています。エビさんは櫛でひげをとかしています。
おもちたちが行った最初のお古は「しょうゆの足湯」。なんとお寿司さんがたちが気持ちよく入っていて、空いているところがありません。
次に行ったのは、「きなこのすなぶろ」。きなこにもぐるとぽかぽかして気持ちがいい。ところが、ちっちゃなおだんごたちが入ってきて、ころころ転がるものですから、きなこがなくなってしまいました。
次に行ったのはトースターサウナ。中はパンたちでぎゅうづめ。おもちたちは隅っこに座ってくつろいでいると、頭がふくれてきました。おもちですからね。みんあ、大騒ぎになって出てきました。
最後に行ったのは、「おなべのおふろ」。おもちたちは、ゆっくりと入れたのでしょうか。
壁の貼ってあるポスターや、お風呂場の野菜や海藻類たちの仕草もとてもゆかいです。
あたたかい部屋の中で、家族みんなで絵本を囲んで、各ページの絵を隅々まで見てください。きっとニタニタが止まりませんよ。

NPO法人こどもほがらかワールド
絵本を読む人・しんちゃん

『ボクはしっている』

『ボクはしっている』

1430円

どんなにステキな絵本でも絶版という憂き目に遭うケースは少なくありません。
16年前、ぼくはステキな絵本と出会いました。でも、すでに絶版になっていて、憤りを感じました。もっと多くの人にこの絵本を知ってほしいと強く思い、無謀にも某出版社に乗り込み、復刊の交渉したのです。結果、何とか再販にこぎつけました。すべてぼくが買い取りました。
つい最近、その絵本が別の出版社から復刊することになりました。『ボクはしっている』(作:神山ます/イマジネイション・プラス)です。
クリスマスイブの夜に、ふと目をさましたボク。そのとき、枕元にいたサンタは、パパと同じめがねをかけていた。プレゼントの包みは、パパが会社の帰りに持っていたのと同じ。洗濯物の中には、あの赤い服が…。「なんだ、サンタはパパだったんだ。ガッカリ」となるところですが、ボクは違いました。どうなったかは、是非、手にとって確かめてみてください。この絵本を、子どもたちに読むかどうか、あるいはどのタイミングで読むかは、それぞれの判断にお任せします。ぼく自身は、子どもが大きくなってから読みました。いずれにしても、まずは大人たちに読んでほしい絵本です。
「クリスマス」、「サンタ」、「親」、「子ども」が、一つにつながる心地よい感覚を味わえるのではないでしょうか。
ステキなクリスマスを!

NPO法人こどもほがらかワールド
絵本を読む人・しんちゃん

『チャーリー、こっちだよ』

『チャーリー、こっちだよ』

1,870円

同じ絵本でも、子どもと大人の反応が違う時が多々あります。今回、ご紹介する絵本はその逆です。子どもと大人の両方が、同じ空間で同時にじんわりと心に染み渡る雰囲気に浸れる絵本です。
『チャーリー、こっちだよ』(作:キャレン・レヴィス、絵:チャールズ・サントソ、訳:いわじょうよしひと/BL出版)
この絵本は実話をもとにしています。アメリカに野生動物を保護する施設があります。この施設でずっと暮らしている山羊のジャックと馬のチャーリーが登場します。山羊のジャックは、他の動物たちと一緒に居るのが苦手です。小屋の中に入ることもできません。そこに新しくやってきたのが、馬のチャーリーです。チャーリーは目が悪いので、遠くに行くことができません。そんなチャーリーに「こっちだよ」と声をかけて、ジャックがガイド役をつとめるようになりました。
ある日、ケガをしそうになったチャーリーを助けるために、ジャックが奮闘し、それがきっかけでジャックはた他の動物たちに近づくことができました。小屋にも入れるようになりました。
そして、チャーリーの目がどんどん悪くなっても、「チャーリー、こっちだよ」と言って、ジャックとチャーリーは仲良く歩き続けていたそうです。
「してあげる」「してもらう」のではなく、「誰かのために」という思いこそがすばらいいことであることに気づかせてくれます。
是非、子どもと大人と一緒の空間で味わいたいおはなしですね。

NPO法人こどもほがらかワールド
絵本を読む人・しんちゃん

『ぼくといっしょに』

『ぼくといっしょに』

1,540円

ぼくは子どもの頃、いろいろなことを想像して遊んでいました。田んぼに積まれた藁を基地に見立てて、地球防衛軍になりきっていたこともあります。僕のイメージでは、積まれた藁は、大きな宇宙基地なのです。その向こう側には、敵の宇宙船がこちらを狙ってます。このイメージを伝えるのに言葉だけでは限界があります。
しかし、絵本なら子どもが描く壮大な想像の世界を表現できます。そんな絵本に出会いました。
『ぼくといっしょに』(作:シャルロット・デマートン、訳:野坂悦子/ブロンズ新社)です。
男の子はお母さんからのお使いを頼まれます。庭を横切り、裏口から出て、果物屋さんにリンゴを買いに行くのです。庭には木が生い茂っていたり、小さな池や小屋があったりします。裏口にたどり着くまで、男の子は木や池、小屋を材料に壮大な想像を繰り広げるのです。この想像の壮大さを表現できるのは絵本ならではです。是非実際に絵を見てください。さらに絵本ならではの特徴があります。絵さがしです。最初と最後のページに、男の子の町が描かれています。最初のページは、お使いに行く前。最後のページは、お使いが終わったあと。よく見比べたら、いろんなことが変化しているのが分かります。
これらの絵本の特徴を存分に活かしたこの作品は、子どもも大人も目いっぱい楽しめます。

NPO法人こどもほがらかワールド
絵本を読む人・しんちゃん

『おおかみのおなかのなかで』

『おおかみのおなかのなかで』

1,870円

新型コロナウィルスにより、ぼくたちの生活は一変しました。「いつ元に戻るのだろう」という不安な声もよく聞きました。
一方で、家族一緒に食卓を囲んだり、話をしたりすることの大事さにも改めて気づきました。元に戻ることばかりに意識を向けなくてもよいのかもしれませんね。
そんなことを愉快に描いている絵本があります。『おおかみのおなかのなかで』(文:マック・バーネット、絵:ジョン・クラッセン、訳:なかがわちひろ/徳間書店)です。
ある朝、ねずみがおおかみに、パクっと食べられてしまいました。おおかみのおなかの中には、先客のあひるがいました。あひるは、食べたいものを食べ、自由気ままにおなかの中で暮らしていました。ねずみが「もどりたいよね、外の世界に」と言うと、あひるは「ぜーんぜん!」と答えます。「外にいたときは、いつ食べられるかと、ビクビクしていたけどここなら安心」というわけです。
そこに、猟師がやってきて、おおかみを撃とうと追いかけます。追い詰められたおおかみの口から、ねずみとあひるが飛び出て猟師を追い払いました。おおかみは、お礼に何でも言うことを聞くと、首を垂れました。ねずみとあひるの望みは「じゃ、口を大きき開けて」でした。
ねずみとあひるは再びおおかみのおなかの中で、快適な生活を送りました。
元に戻るだけではなく、今の状況を受け入れ、楽しむことも必要ですね。
NPO法人こどもほがらワールド
絵本を読む人・しんちゃん

『トイレロケット』

『トイレロケット』

1,210円

5月、6月は、保育園や幼稚園での生活にようやく子どもたちが慣れてきた頃です。トイレにも行くのが楽しくなる絵本をご紹介します。
『トイレロケット』(作:はっとり ひろき/講談社)
トイレをロケットに見立てた楽しい絵本です。男の子が、段ボール箱を切ったり貼ったりしてなにかつくっています。それを小脇に抱えて、ママにピシッと敬礼。「いってまいります!」。工作をしていた段ボール箱は、宇宙ヘルメットだったのです。それを頭にかぶります。
便器は宇宙船の操縦席です。子ども用便器のハンドルを握って、スイッチオン!合図はおならです。そして、ロケットが重力に逆らって発射台から飛び立つように、男の子も「うーん。うーん」と力を入れます。
するとウンチの先が出てきました。「きた、きた、きた!」「宇宙へー!」「行くんだー!」と叫んだ途端、「出た~!」まさにロケットが宇宙に飛び立つようなエネルギーです。
スッキリしてトイレから出てきた男の子は、段ボールの宇宙ヘルメットを脱いで敬礼。「ただいま、かえりました!」任務完了、という気分なのでしょう。これはトイレが楽しくなりそうですね。
こどもたちに、この絵本を読んだあと、「行ってきます!」と敬礼してから胸を張ってトイレに駆け込んだ子が何人かいました(笑)
絵本と生活が密着すると、楽しい出来事がたくさ起こりそうです。

NPO法人子どもほがらかワールド
絵本を読む人・しんちゃん

『りんごがひとつ』

『りんごがひとつ』

1,430円

読み聞かせをしていると、大人と子どもとで反応するシーンが違うことはよくあります。
『りんごがひとつ』(作・絵:ふくだすぐる/岩崎書店)を読んだときもそういうことが起こります。
落ちているひとつのりんごを、お腹をすかせた動物たちが集まって見つめています。その時、さるがそのリンゴをとって逃げました。動物たちは追いかけました。木から木へ。川を渡って。崖ものぼって。子どもたちは、このシーンで喜ぶ子が多いです。そして、とうとうさるは行き止まりの崖に追い詰められてしまいました。動物たちは口々に脅しました。恐くなったさるは崖から飛び降りました!と思ったら、飛び降りるふりをしただけで、崖のくぼみにしゃがみました。動物たちは、飛び降りたのなら仕方ないと帰っていった…ふりをして戻ってきます。
子どもたちはこのシーンでキョトンとしていますが、逆に大人からは笑いが起こります。すると、子どもたちも意味が分からないながらも、何だかうれしそうになります。なんといっても、子どもたちは大人が笑っている様子が大好きですから。楽しさを感じるのですね。だから、この絵本は参観日のような子どもと大人の両方がいるところで読むと、より楽しめます。
ちなみに、最後はあったかいシーンで終わるので、子どもも大人も一緒にやさしい気持ちになれます。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『きをつけて おおかみだ!』

『きをつけて おおかみだ!』

1,320円

参加する要素、盛り上がる要素、心あったまる要素の3拍子揃った絵本があったらいいですね。
あります!『きをつけて おおかみだ!』(文:セドリック・ラマディエ、絵:ヴァンサン・プルジョ、訳:谷川俊太郎/ポプラ社)です。
簡単な仕掛け絵本にになっています。最初に左側にページをめくると、オオカミがふぅーっと息を吹きかけている絵があります。右側のページを観音開きの要領で、右にめくっていくと木の葉っぱがふっとび、木もふっとびます。最初にめくったおおかみが息を吹きかけている絵は、最後までそのままです。右側のページをめくるたびに、家の屋根や扉や窓が次々にふっとび、家の中にいたのは3匹のぶた。ぶたにも息を吹きかけると、ぶたがふっとぶかと思いきや、手にもっているケーキのろうそくの火が消えるだけ。「おちゃんじょうびおめでとう、おおかみさん」となります。
絵本を読むときは、子どもたちを巻き込みましょう。「おおかみさんと一緒にふぅーってしてみよう!」というと、みんな、一斉に「ふぅーっ!」と息をふきまけます。そのタイミングで右側のページをめくると、次々といろんなものがふっとぶので、子どもたちは、自分がふっとばしているかのように大興奮です。
最後のページでは、ふっとばしてやろうと意気込んでいた子どもたちの顔がやさしくなります。ついでに「ハッピーバースデー トゥーユー」と歌うと、みんな一緒に歌ってくれます。
絵本を通じていろいろな感情を見せてくれる子どもたち。より一層、愛おしさが募りますね。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『じゃない!』

『じゃない!』

1,540円

絵本の醍醐味は、なんといってもページをめくる時のワクワク感です。
例えば、「次はどうなる?」「何が出てくるの?」というような前のめりになるようなあの感覚ですね。
そのワクワク感が、群を抜いている絵本を紹介します。『じゃない!』(作・チョーヒカル/フレーベル館)です。作者のチョーヒカルさんは、リアルなボディペイントを得意とするアーティストです。この絵本も、作者の作品を写真撮影してつくったものです。
最初はキューリが1本出てきます。ページをめくると、何と皮がむけて中はバナナ!次はみかん。ページをめくると中身はトマト!そんな展開が、最後まで続きます。最後はアイスクリーム、かと思ったら…。
実はキューりはバナナにペイントしているのです。みかんはトマトにペイントしているのです。そのリアルさに、ページをめくるたびに「え~っ!」という驚嘆の声が、大人からも子どもからも一斉にあがります。
読み聞かせの際は、子どもたちの反応を最大限に引き出したいですね。
例えば、みかんのページでは、こんなやりとりはいかがでしょうか。
「みかん!」
「みかん、好きな子」
「は~い!」
「じゃ、食べようか」(次のページを開く)
「え~っ‼」
子どもたちには、ページをめくるワクワク感をいっぱい経験してほしいと思っています。いつかそれが、未知の世界に一歩踏み出すときのワクワク感につながっていきますよ。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『うちゅうじんはいない!?』

『うちゅうじんはいない!?』

1,540円

 絵本を読んでいる時の楽しみのひとつは、子どもたちの反応です。じっくりと絵に見入っているときもあれば、大爆笑のときもあります。どの反応も読み手にとってはうれしく、楽しいものです。
「うちゅうじんはいない!?』(作・絵:ジョン・エイジー、訳:久保陽子/フレーベル館)がそれです。
 少年は、宇宙人を見つけるために、ある星に降り立ちます。いくら歩いて探し回っても、何も見つかりません。せっかくプレゼントにチョコレートケーキを持ってきたのに。ひょっとしたら何もいないかも、と弱気になり、仕方なく帰ろうとすると、岩の上にきれいな花を発見!宇宙人は見つからないかったけど、花を発見しました。少年は大興奮です。地球に戻って、このことを伝えれば、きっと大騒ぎになると思うとワクワクします。帰りの宇宙船の中で、花を見つけた自分へのごほうびにケーキの箱を開けました。なんと、箱の中はからっぽ。誰がケーキを食べたのでしょう。少年は、宇宙人を発見できなかったのですが、この絵本を見ている子どもたちは、早い段階で宇宙人を発見します。「おった!」「あそこや!」「うしろ!」などと大きな声で、絵本の中の少年に伝えようとします。どっちが読み手かわからなくなるくらいです。
 どんな反応にせよ、子どもたちが絵本の世界に浸るとき、読み手にとっては至福の時間ですね。

NPO法人ほがら絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『ムニャムニャゆきのバス』

『ムニャムニャゆきのバス』

1,512円

 ぼくたち大人にとって、「はっ?」と首をかしげたくなるくらい意味のわからない絵本に限って、子どもたちは大爆笑になったりします。
『ムニャムニャゆきのバス』(作:長 新太/偕成社)もそのひとつです。
 バスから降りる合図のブザーが鳴ったと思ったら、なんと降りてきたのは大きな魚。またブザーが鳴ったと思ったら、今度は三角定規が降りてきました。続いて、大きなトマトやズボンまで。まったく意味がわかりません。我々大人はぽかんと口を開けるしかありません。「この先、どうなるのだろう」と少々心配しているぼくたち大人にはまったく関係なく、バスはムニャムニャを目指してゆきます。
 今度は「ムニャムニャ」が気になってきました。ちょうど次のページでこう書かれてありました。「ムニャムニャはどんなところだって?わからないからおもしろいんじゃないの。そんなことを きいては、イケマセン イケマセン」
やられました。
 これはわからないことをわかろうとするぼくたち大人への「所詮、わかっている世界というのは狭いよ」という筆者からのメッセージだと受け取りました。ちなみに僕たち大人がポカンと口を開けている間、子どもたちは大爆笑でした。さらに、読み終えてから子どもたちに「ムニャムニャに行ったことがある?」と聞くと、必ず何人かの手が挙がります。
 やっぱり、ぼくら大人の世界は狭いのかもしれませんね。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『なりたいものだらけ』

『なりたいものだらけ』

1,728円

小学生に、「大きくなったら何になりたいの?」と聞くと、いろんな職業の名前が出てきます。「サッカー選手」、「保育士」、最近では「ユーチューバー」や「ダンサー」などもあります。
保育園や幼稚園の子どもたちに聞くと、これらの職業に加えて、もっと自由な答えがかえってきます。「本を読む人」、「アサガオを植える人」など、職業のカテゴリーに入らないものも出てきます。本来やりたいことやなりたいものというのは、既にある職業の中から選ぶことに囚われなくてもいいのかもしれないですね。そんな自由な発想を刺激してくれる絵本があります。『なりたいものだらけ』(作:ジェリー・スピネッリ、絵:ジミー・リャオ、訳:ふしみみさを/すずき出版)です。
男の子が、大きくなってなりたいものをあれこれ考えています。まったく職業の枠に囚われていません。
例えばこういうものになりたいんだって。
・タンポポのわたげふきやさん
・かみひこうきとばしやさん
・こいぬだっこやさん
・トンネルほりほりやさん
・レモンソーダごくごくやさん
・ケーキのいちばんいいとこもらいやさん
ひょっとしたら、この男の子は、将来、誰もやってなかったことを、新しい仕事にしてしまうかもしれないですね。
ちなみに、大人の人たちにも、「将来、何になりたい?」と聞いてみたいな。まだまだ大丈夫!

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『おっと あぶない』

『おっと あぶない』

1,404円

 本やテレビなどで、人類の進化について取り上げていると、ぼくは一番最初に2足歩行をした人は、どういう思いで2本の足だけで立とうと思ったんだろう?などと思ってしまいます。どうしても採りたい木の実か果物があって立ち上がったのだろうか。それほどほしかった果物って何だろう?そんなことをに思いを巡らせていたら、カエルがどうやって今の姿になったのかが描かれている絵本に出会いました。『おっとあぶない!』(作:サトウマサノリ/パイインターナショナル)です。
 カエルの遠いご先祖様が昔を振り返ります。「むかし、わしらは手も足もなく、海の中にいる生き物だった。突然やってきた別の生き物が、大きな口を開けてわしらを飲み込み始めた。食われてたまるか!と、陸に逃げた者たちがいた。そこでも、敵が現れて多くの仲間が食べられた。生き残った者の中には、敵から逃げるためにジャンプする者が現れた…」
危ない目に逢うたびに、姿形を変えて生き抜き、今の姿になったカエルのご先祖様たちの奮闘ぶりが、この絵本には描かれています。
 もちろん、科学的根拠はありません。そして笑えますが、ふか~い絵本でもあるのです。カエルのご先祖様はこう言います。「わしらの姿は、だいぶ変わったが、まだこうして生きている。」と。“何としてしても生き抜く”というエネルギーを感じさせてくれます。
 最後にご先祖様は後輩たちにこう言うのです。「よいか、若いきみたち。ピンチがわしらを強くしてくれるんじゃぞ」
 ふか~いでしょ。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『べべべんべんとう』

『べべべんべんとう』

1,188円

保育園や幼稚園に入園すると、一年を通じて、お母さん弁当を作る機会がなんどかありますね。最初は遠足のお弁当でしょう。
どのお弁当も、子どもたちは、おとなになってからも鮮明におぼえているものです。むしろ、大人になってから、思い出すことの方が多いのではないでしょうか。
そのくらい、お弁当は心の奥深いところまで影響を与えるのでしょう。
だから、お弁当の楽しさを是非、知っていただきたいと思い、『べべべんべんとう』(さいとうしのぶ作;教育画劇)を紹介します。
最初のページには、家族のお弁当が描かれています。それぞれのお弁当に説明がついています。「おとうさんのはカロリーひかえめ」「お兄ちゃんのどかべん からあげおおいなあ」「おねえちゃんのはふりかけでおしゃれに」「おじいちゃんおのはじみやなあ」。そしてお皿に半端なおかずがのっかっているのは、おかあさんの分。「おかあさんのはみんなののこり」です。リアルですね。
遠足のお弁当、運動会のお弁当。おやつまでていねいに描かれています。どのページも生活感が溢れていて、それぞれのうちのお弁当と重なります。
ホカベンも登場します。「これはおかあさんがでかけるときの晩ご飯。さびし~い!」おかあさんがお弁当を作ってくれるありがたさを感じます。
是非、子どもたちによむときには、お弁当の絵をじっくりと一緒に見てください。各弁当の解説も読んであげると、より一層楽しめます。何度も何度も楽しめる絵本です。何度も楽しんで、本物のお弁当で家族の絆をしっかりとつむいでくださいね。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『カどこいった?』

『カどこいった?』

1,296円

 毎月、たくさんの絵本が出版されていますが、そんな中で新しい試みをしている絵本と出会うとそのチャレンジ精神に感心することがあります。今回、紹介したい絵本は『カはどこいった?』(作:鈴木のりたけ・小学館)です。
表紙をめくると、縞模様の血を吸う蚊が手の甲にとまっています。反対側のページには五指を開いた掌が描かれています。ページをとじて忌々しい蚊を「パーン」とたたいてつぶそうという考です。思いっきりページをめくって『パーン』。残念。蚊は逃げてしまいます。
今度は、何段か積み上げている積み木にとまっています。これも「パーン!」とページをめくると、蚊は逃げて積み木は崩れてしまいました。
お次は、ショートケーキのイチゴの上にとまっています。これまた、「パーン!」とページをめくると、なんとケーキはぐちゃぐちゃにつぶれた上に、蚊は逃げてしまいました。
 蚊はいろんなところにとまって逃げます。揚げ句に、噴水の小便小僧の頭の上にとまったり。「パーン!」とページをめくったらどうなるかは、絵本を見てのお楽しみ。
 このように、ページをめくる動作が手でたたく動作と連動するのは、新しい試みだと思います。いかにも自分が叩いているような気になりますね。
 さて、何度も本棚からこの絵本を出してきて見ている子どもがいたら、ひょっとしたらその子は,実は蚊は一匹だけではないという事を発見したのかもわかりません。思わぬところで他の蚊が隠れていたりするんです。絵本を楽しんでもらう事に知恵を絞り続けている絵本作家に拍手!

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『みーんな はははっ』

『みーんな はははっ』

1,080円

 子どもたちから元気をもらえる赤ちゃん絵本を紹介します。『みーんな はははっ』(作:オームラ トモコ・アリス館)です。
 とてもシンプルな絵本です。ネズミがリンゴをかじっています。「ねずみさーん、わらって、わらって~」。ページをめくると、ネズミが口を大きく開けて歯を見せて「はははっ」と笑っています。
「らいおんさーん、わらって、わらって~」。肉をかみちぎっていたライオンが鋭い歯を見せて楽しそうに笑っています。
「おうさまさーん、わらって、わらって~」。おうさまさんがにこっと笑うと、歯茎が見えてこれまた楽しそう。
「かばさーん、わらって、わらって~」。キャベツがまるまる入る大きな口を開けて笑っています。
最後は、「あかちゃーん、わらって、わらって~」。やっとはえてきたかわいい前歯を見せて笑っています。
 子どもたちに読むときは、笑うページで思いっきり大きな口を開けて笑いましょう。子どもたちも、一緒になって笑ってくれます。
たったそれだけのことなのに、読んでいるぼくたちは、うれしくなります。しあわせを感じます。
大人相手にこの絵本を読んでも、笑ってくれません。意味もなく笑える子どもたちは、ステキですね。人をしあわせにする力があります。
子どもたちにいっぱい笑ってもらって、元気をもらいましょう!

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『あめだま』

『あめだま』

1,620円

 時に絵本は、目には見えないものや聞こえない物の存在を感じさせてくれます。『あめだま』(作:ベク・ヒナ、訳:長谷川義史・ブロンズ新社)は聞こえない声が聞こえてくるおはなしです。
 友だちが仲間にいれてくれず、毎日、一人ビー玉で遊ぶドンドン。駄菓子屋で見つけた珍しいビー玉。それはあめ玉でした。1個なめると、ソファーの声が聞こえてきました。日頃のソファーの気もちがわかりました。2個目をなめると、飼い犬の声が聞こえてきました。犬の本当の気持ちがわかって仲良くなりました。3個目は。ザラザラしたあめをなめてみました。いつも口うるさいお父さんの声が聞こえてきましたが、愛情たっぷりの声でした。4個目はピンクのあめ。フーセンガムの入っているあめでした。ふくらますと、おばあちゃんの声が聞こえてきました、。いつでもおばあちゃんと話ができるようにフーセンガムを机の裏に貼りつけました。5個目の赤や黄色が混ざったあめをなめると、外から声が聞こえてきました。赤く染まった落ち葉の「バイバイ」「バイバイ」という声。最後に透明な雨をなめたのですが、声は聞こえません。ラストシーンは絵本のページを自らめくって確かめてみてください。
 この絵本を読んで、ひょっとしたら「ぼくも聞こえるよ」という子がいるかもしれません。目に見えないものや聞こえない物の存在を考えるだけで心が豊かになりますね。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『さかなださかなだ』

『さかなださかなだ』

1,080円

 食べることが楽しくなる絵本があります。『さかなださかなだ』(作:長野ヒデ子、偕成社)です。
 魚屋さんが両手を広げたくらいの大きな魚を届けてくれました。子どもたちはその大きさにびっくり!絵をよく見ると、サケかも。子どもたちは運ぶのも一苦労です。みんなで担いで運びます。運んでいる途中で、さかながツルリとすべります。まるで生きているよう。
 ようやくさかなを運んだら、今度は園長先生らしき人が炭をおこしています。子どもたちは網を運んでいる子もいれば、ウチワをパタパタしている子もいます。さかなに「どこからきたの?」と聞いている子やさかなの虫歯検査ををしている子もいます。
 いよいよ網の上に置かれたさかなはジュージューと焼けていく様子はほんとにおいしそう。大きなテーブルの上で、みんなでおいしそうにさかなを頬張ります。食べたあとは、骨だけになったさかなの絵を描きます。大きなさかなを料理して食べることに満足した子どもたちは、ぐっすりお昼寝。
 食べることってワクワクするんです。食べることって楽しいんです。それを体験している子は、生きることに積極的です。おうちの食卓でも、保育園・幼稚園の給食時間でも、是非、食べることを楽しんで下さい。
 「さかなだ!さかなだ!」「おにくだ!おにくだ!」と食べることにワクワクしている子どもが増えるといいな。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『109ひきのどうぶつマラソン』

『109ひきのどうぶつマラソン』

1,404円

 運動会の季節に是非、子どもたちに読んでいただきたい絵本があります。『109ひきのどうぶつマラソン』(作・絵:のはなはるか、ひさかたチャイルド)です。
 ある日、動物たちにどうぶつマラソン大会のお知らせが届きました。それぞれの動物の代表選手を1ぴき決めて、参加し、一番になると金メダルがおくられるのです。代表に選ばれた109匹の動物たちはスタートラインに立ち、合図を待ちます。速そうな動物や見るからに遅そうな動物、大きな動物、小さな動物などいろいろです。いよいよスタート。トップを走る動物もいれば、最後尾をゆっくりと歩いている動物もいます。なんとしりとりをしながら走っている動物もいます。これまたいろいろです。途中、ジャングルがあったり、海があったり、洞窟があったりもします。陸で走るのが苦手な動物でも、海では大活躍していたり、岩登りが上手な動物もいたり、綱渡りが得意な動物もいます。そして全員がゴールしてちゃんと順位も決まります。ところが金メダルは全員に贈呈されるのです。22位のペンギンは泳ぎが一番だから。優しさが一番のアルパカにも金メダル。金メダルをもらって「ぼくは何の一番?」と聞いている動物もいます。
 各ページに細かく描写されているそれぞれの動物たちの様子を見ていると、それぞれの一番があれば、みんな、しあわせなんだなと思えてきます。
 運動会の季節です。それぞれの子どもたちの一番を見つけてあげましょう。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『もうちょっと もうちょっと』

『もうちょっと もうちょっと』

1,296円

 とてもまじめに取り組んでいるのに、ずっこけてしまうことってありますよね。本人は必死ですが、はたから見ているとおもしろく映ったりもします。例えば、乳児が自分でおもちゃのフタを閉めて、取り出せないと怒り出すときなんて、愛らしさも手伝って思わず笑ってしまいます。『もうちょっともうちょっと』(文:きむらゆういち、絵:高畠純・福音館書店)でも、そんなおもしろさを味わうことができます。
 木から落ちたりんごが、穴に入ってしまいました。コブタがとろうと手をのばしたら、「ツンッ!」と指先に当たって、されに奥へ。次に通りかかったサルも「ツンッ!」。ドンドンりんごは奥に入ってしまいました。「ツンッ!」とりんごが奥に入ってしまったときの動物たちの表情は、もう吹き出してしまいます。まじめにリンゴをとろうとしているからこそ、おもしろさが倍増するのですね。そして、そこへゾウがやってきました。長い鼻を穴の中にのばして、とれました!その途端、ゾウはひとりで食べようと、りんごをもって逃げ出しました。でも、最後はみんなで仲良くリンゴを食べることができました。何があったのかは読んでからのお楽しみ。
 子どもたちに読むときは、「もうちょっと、もうちょっと」というセリフをじれったいくらいにもったいぶりながら読むと、おもしろさが倍増します。
 まじめなことほど、おもしろさが潜んでいます。自分の行動を振り返って、面白さをさがす余裕があるといいですね。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『やまのかいしゃ』

『やまのかいしゃ』

1,620円

 子どもは大人の鏡です。大人があくせくしていると、子どもは落ち着きません。大人がグチばかり言っていると、子どもは否定的な言葉が多くなります。大人が笑わないと子どもも笑えません。まずは大人自身がリラックスしてみるのがいいと思うのです。リラックスするにはちょうどいい絵本があります。『やまのかいしゃ』(作:スズキコージ、絵:かたやまけん・福音館書店)です。
 朝寝坊した会社員ほげたさん。ようやく起きたときには、昼過ぎになっていました。電車に飛び乗ったらビルが立ち並んでいる会社とは反対方向の山の中に入っていきました。会社に持っていくカバンやメガネもわすれていることに気づきましたが、どうしようもありません。山の駅に到着したほげたさんは、こうなったら今日は山の会社に行こうと思い、山登りを始めます。途中で同じ会社のほいさくんと出会いました。二人は喜び勇んで頂上まで登りました。こんなにいいところならみんなを呼ぼうと、会社に電話をしました。社長が会社のみんなを引き連れてやってきました。山の頂上では、電話をしいる人もいれば、そろばんを使っている人もいれば、熊と相撲を取っている人もいれば、宴会をしている人もいます。
 ほげたさんの能天気さがホッとさせてくれます。これでも、ほげたさんは結婚して子どももいるのですから、ほげたさんの能天気さは筋金入りです。何よりも、山の頂上でのみんながそれぞれやりたいことをしている様子がとっても楽しそう。こどもたちもこれを見れば、「大人って楽しそう」と思ってくれるのではないでしょうか。本来、働くことは楽しいことですからね。

NPO法人ほがらか絵本畑
 絵本を読む人・しんちゃん

『だれのじてんしゃ』

『だれのじてんしゃ』

1,058円

 子どもたちは、時々、さりげないやさしさを見せてくれます。例えば、みんな大爆笑の絵本ライブで、途中入園したばかりの3才の女の子が緊張していました。すると、隣の女の子が背中をトントンしながら「おもろいなあ」と笑顔で話しかけていました。あるいは、保育園の玄関で「アリや」と言って、ピョンとまたいで入った女の子がいたり。
 そんなさりげないやさしさを、さりげなく表現している絵本があります。『だれのじてんしゃ』(作、絵:高畠純・フレーベル館)です。 男の子が自転車に乗っていると、目の前になが~い自転車がありました。「誰の自転車?」と思っていたら、ワニが乗りました。ワニが自転車に乗っていると、目の前にはごつい耕運機のような自転車がありました。「誰の自転車?」と思っていたら、ゾウの自転車でした。
 次々と目の前に、不思議な自転車が現れます。それぞれ、モグラ、イモムシ、カメレオン、ダチョウ、カンガルーの自転車でした。
 最後に、きれいなお花がかごに入った赤い自転車がありました。「誰の自転車?」と思っていたら、人間の女の子が「わ・た・し・の」と言って乗っていきました。すると、目の前には小さなカタツムリがいます。女の子は「あなたのじてんしゃは?」と聞いて、ラストページを開くと、自転車に乗った女の子の後ろ姿です。その荷台には、小さなかたつむりがちょこんと乗っています。
 大盛り上がりする絵本ではありませんが、あったか~い空気の余韻が残ります。 子どもたちのさりげないやさしさに気づく大人でありたいですね。

NPO法人ほがらか絵本畑
 絵本を読む人・しんちゃん

『こんなかいじゅうみたことない』

『こんなかいじゅうみたことない』

1,404円

 卒園を控えたねんちょうクラスの子どもたちに、是非読んであげてほしい絵本があります。
『こんなかいじゅうみたことない』(作/藤本ともひこ 出版社/WAVE出版)です。
 ちょっと変わった怪獣の子どもがいました。怪獣のくせに外で暴れるよりも、絵本を読むのが好きなのです。部屋もきっちりと片付けます。靴を脱いだら、右左をちゃんとそろえます。もっと怪獣らしくしてほしいと思っているお父さんとお母さんは、泣きながらこう言いました。「こんなかいじゅうみたことない」。困り果てた怪獣のお父さんとお母さんは、人間の保育園に預けることにしました。そこには小さな怪獣がいっぱいいます。どろんこ怪獣にちらかし怪獣。でもみんな、ちょっぴりやさしいのです。怪獣は、小さな怪獣たちが大好きになりました。そして、怪獣は保育園を卒園して、口から費を噴く立派な怪獣一年生になりました。でも、この怪獣、なんだかちょっぴりやさしいのです。
 絵本を読んだあとに、子どもたちに「どろんこ怪獣のこ?」「ちらかし怪獣のこ?」と聞くと、チラホラと手があがります。自覚があるのですね(笑)でも、一番たくさんの手が挙がるのは、「ちょっぴりやさしい子?」と聞いたときです。
 確かに、保育園の小さな怪獣たちは、ちょっぴりやさしいですね。保育園を巣立っていく、ちょっぴりやさしい小さな怪獣くんたちに、エールと感謝の気持ちを込めて、読んであげましょう。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『ねこのピート だいすきなしろいくつ』

『ねこのピート だいすきなしろいくつ』

1,404円

 「こうでなければ」「こうあらねば」という思考が大人自身を苦しめ、子どもは窮屈になってしまいます。そんな考えを一気に振り払ってくれる絵本があります。『ねこのピート だいすきなしろいくつ』(作/エリック・リトウィン、絵/ジェームス・ディーン、訳/大友剛、文字画/長谷川義史 出版社/ひさかたチャイルド)です。
 ねこのピートはお気に入りの白いクツをはいて、歌を歌いながらおでかけ。「しろいくつ、かなりさいこう」ところが、いちごの山に登ったピートのクツは赤になってしまいました。でもピートは「あかいくつ、かなりさいこう!」と歌って歩き続けます。
 次はブルーベリーの山に登って、ピートのクツは青になってしまいます。でも、ピートは「あおいくつ、かなりさいこう!」と歌って歩き続けます。
今度はどろんこに入って、ピートのクツは茶色に。ピートは「ちゃいろいくつ、かなりさいこう!」と歌って歩き続けます。さらに、水に入ったピートのクツは、色がみんなとれて白に戻ったけれどびしょびしょ。ピートは「ぬれたくつ、かなりさこう!」と歌って歩き続けます。
 何があっても歌を歌って、前に進むのがピートの生き方です。なぜなら…、英語版のラストページを紹介しましょう。
「because it’s all good」ひとつの考えに囚われて、勝手に苦しんでいる自分がアホらしくなるくらい、「かなり さいこう!」の気分になれますよ。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『うまのおいのり』

『うまのおいのり』

1,404円

 師走の慌ただしい時期だからこそ読んでいただきたい絵本があります。特に、保護者さんや保育士さん自身に読んでいただきたい絵本です。
『うまのおいのり』(まつむらまさこ・至光社)です。
 スイスの馬屋にかけてあった「愛馬訓」を見て、著者の松村さんは、心の奥底に響くものであり、この作品を描いたそうです。それは、新しく飼い主になる人への手紙です。そして、それは馬からのお願いでもあります。
 例えば、こんなことが書いてあります。言葉がわからなくても急がせたり、怒ったりしないで、何度でも話しかけてほしい。「そうすれば、わたしはあなたのことばがわかるようになるでしょう」手綱を強く引いたり、ベルトをきつく締めつけないでほしい。なぜなら「あなたをもっとすきになって、あなたのしごとをてつだい、あなたとともだちになりたいから。」太陽の陽射しが強いときは、「木のようにわたしをまもってください。」
「わたしがずっとあなたのともだちでいられますように…。」そして、馬の一番のお願いは、「さいごまであなたのともだちでいることです。」
 これらを、子どもからのお願いにおきかえて読んでみると、子どもが愛しくて、愛しくて、たまらなくなりますね。子どもをいくら愛しても、愛し過ぎるということはありません。あふれるくらい愛しましょう。今年も、子どもたちと一緒にいられたことに感謝しながら。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『また おこられてん』

『また おこられてん』

1,404円

 「親の心、子知らず」とはよく言ったものですが、その逆もまた真なり。「子の心、親知らず」も一理あると思います。親も子も、お互いに悩み、苦しんだりしながら、一緒に生活しているのが家族です。そんな中で、お互いの気持ちが少しでもわかりあえた瞬間は、家族でいることの幸せを実感しますね。
 そんな様子を描いているのが、『また おこられてん』(作:小西貴士、絵:石川えりこ 童心社)です。
 お母さんに日頃からあれこれとおこられているけんちゃんは、一緒にお風呂に入ったおとうさんに「かあちゃん、おこりんぼマシーンや」と漏らします。部屋を片づけてないとおこられる。でも、ちらかしているのではなく、忍者ごっこを一緒にするための配置をしてあるだけ。食事を残したらおこられる。でも、おなかがすいてないときがあるから、そんなときは食べられないだけ。うそをついたらおこられる。でも、かあちゃんをおこらせたくないだけ。謝らないとおこられる。でも、おこられたら、のどが詰まったみたいになって、うまく言えないだけ。
 お風呂で、けんちゃんからそんな話を聞いたおとうさんは、以前、けんちゃんがケガをして救急車で運ばれたとき、母ちゃんが一晩中、祈っていたことを話します。すると、けんちゃんはにこにこ顔で「かあちゃんは、ぼくのこと好きなんやね。クックックッ」と。
 是非、家族で読んでもらって、家族でいることのしあわせ感を味わっていただきたいと思います。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『おたすけこびとのにちようび』

『おたすけこびとのにちようび』

1,620円

 休みの日、親はゆっくりしたいと思っていても、子どもはやる気満々。いつもよりも早起きしたりします。いったいこのエネルギーは何なのでしょう。そんなエネルギーに満ち溢れた子どもたちの様子を描いているのが、おたすけこびとシリーズ第6弾の『おたすけこびとのにちようび』(文:なかがわちひろ、絵:コヨセ・ジュンジ 徳周書店)です。
 日曜日におねぼうしようと思っても、やっぱりもったいないと思ってしまうおたすけこびとたち。朝からみんなでお弁当をつくって、おやつを詰めて外に遊びに行きます。それぞれが思いっきり遊びます。ボール遊びをしている子どもいれば、綱引きをしている子もいたり、バッタに乗って遊んでいる子もいます。遊んでいる途中で、カメがひっくり返って困っている現場に遭遇。黙って見過ごすわけにはいかないおたすけこびとたち。「だって、ほっとけないもんね」と、やっぱり出勤です。はたらく車で亀を助ける様子は、チームワーク抜群。救助が終わると、みんなでお弁当を食べ、再び遊びます。
日が暮れて、帰ってきてからは、それぞれが自由な時間を大部屋でゆったりと楽しみ、三々五々」、寝室に向かいます。
 この絵本に登場するこびとたちは、普段、見かける子どもたちの姿とそっくり。明日のことは、考えず、目の前のことに100%のエネルギーを注ぎ、一日を満喫する子どもたちはやっぱりステキです。しかも、遊びも仕事も同じエネルギーで取り組んでいるところがすごいですね。自分の思いに正直に生きている子どもたちだからこそ、日々、エネルギーに満ち溢れているのかもしれません。
 我々大人も見習わないとね。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『ぼくがすきなこと』

『ぼくがすきなこと』

1,404円

 「すきなことは何?」という質問に対して、「食べること」「スポーツをすること」「読書をすること」などと答えると、会話も弾みやすいです。ところが、好きなことの中には、瞬間的であったり、感覚的であったり、その人にしかわからないような”マニアック”なものもあります。子どもたちは、そういう感覚を結構楽しんでいるものです。
 そんな子どもの様子を描いている絵本が『ぼくのすきなこと』(文:中川ひろたか、絵:山村浩二・ハッピーオウル社)です。
例えば、窓ガラスを伝わる雨つぶ競争。一番最初に下までまっすぐに落ちていきそうな雨つぶが、途中でクルリと横に向きを変えて、その間にほかの雨つぶに抜かされたりすることもあります。
あるいは、下敷きをこすって、髪の毛を立たせること。
太陽の光を鏡で反射させて、あちこちを照らすこと。
散髪屋さんの赤・白・青のくるくる回る看板が、下に消えては上から出てくる様子を見ていること。
 大人になって時間に追われると、好奇心もあまり働かなくなるのかしら。ちなみに、ぼくは子どもの頃、アリの集団を透明の瓶に入れて、瓶の壁沿いに巣を作っている様子を見ているのが好きでした。当時はヒアリの心配もなかったですしね。
 是非、子どもたちと一緒に”マニアック”な好きなことを見つけてみてください。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『まほうの夏』

『まほうの夏』

1,404円

 子どもの頃、夏に田舎のおばあちゃんちに行くのがとっても楽しみでした。用水路にいる魚を網で捕まえたり、縁側でスイカにかじりついたり、朝の歯磨きは外の水道でしました。外で色んな遊びができる」夏は特別でした。
 そんな夏の様子を描いた絵本が『まほうの夏』(作:藤原一枝・はたこうしろう 絵:はたこうしろう・岩崎書店)です。夏休み、都会に住む兄弟2人は、お父さんもお母さんも仕事で退屈な日々を過ごしていました。そんなとき、田舎のおじいさんか「遊びに来ないか」とハガキが来て、兄弟2人だけで嬉々として田舎に向かいました。すぐに田舎の子と友だちになり、一緒に山に行き木に登ったり、川を渡ってオニヤンマを捕まえたり、夕立の中をズブ濡れで走ったり。たっぷり遊んだあとはごはんがおいしい。今までにやったことがないことを、次々と経験していきます。そして、スイカのタネも遠くに飛ばせるようになりました。チンチン電車に乗って、おつかいもできるようになりました。田舎から帰る頃には、来る前の自分から脱皮したようなスッキリした顔をしています。
 多くの大人の方が、自分の子どもの頃とオーバーラップすると思います。そして、思い出してほしいのです。未知のことにワクワクした日々のことを。ぼくたちの子どもの頃とおなじように、今の子どもたちにもワクワクした夏をすごしてほしいですね。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『ぼく、ニホンオオカミになる!!』

『ぼく、ニホンオオカミになる!!』

972円

 最後のニホンオオカミが捕獲されたおは、奈良県東吉野村です。100年以上前のことです。2015年、同村で捕獲110周年をきねんして、「ニホンオオカミ手作り絵本コンクール」が行われました。その時の優秀作品が「ぼく、ニホンオオカミになる!!」(作、絵:マスダケイコ・リーブル出版)です。
 飼い犬のヤマトは、ニホンオオカミになりたいと思っていました。飼い主のおじいちゃんからニホンオオカミのすごさを聞いていたからです。ニホンオオカミは心のやさしいいきもの。ニホンオオカミは一匹の恋人どだけずっと一緒に生きる。ニホンオオカミの鳴き声は山の向こうまで届く。
ニホンオオカミは山のしげみから見守ってくれる。
 あるとき、山の中で道に迷ったヤマトは、さり気なく道案内をしてくれる存在に出会います。絶滅したはずのニホンオオカミ?今も山の中から見守ってくれているの?そして、ヤマトは心に決めました。「ぼく、ニホンオオカミになる!!」
 さすが、最優秀作品です。絶滅したとされるニホンオオカミが、今も東吉野村を山の中から見守ってくれていると思わせてくれる力強さがあります。
 さらに、犬のヤマトが何の躊躇もなニホンオオカミに「なる!」と言い切るストレートな素直さが心地よいです。僕もいつの日か、子どもたいちに「ぼく、しんちゃんになる」と言ってもらえるようにがんばります。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『みつけてん』

『みつけてん』

1,944円

 言葉がシンプルで絵もシンプル。そんな絵本にじっくりと見入っている子どもたちはシンプルな情報から、とてもたくさんのことを感じとって想像の世界に入り込んでくれています。子どもたちのこういう反応に出会ったとき、思わず絵本に感謝したくなります。
 その絵本が、『みつけてん』(作:ジョン・クラッセン、訳:長谷川義史・クレヨンハウス)です。
ふたりづれのカメがひとつ帽子を見つけます。それぞれがかぶってみると、とても似合います。しかし、帽子はひとつだけ。カメたちはステキな答えを出しました。「見つけんかったことにしよう」と言って、帽子を無視。そばにあっても無視。そのうち夜になってウトウトしてきました。一匹のカメがそっと動き出します。帽子のそばまで行きながら、ウトウトしているカメに、もう寝たかと声をかけます。ウトウトしているカメは、夢を見ていると言いました。どんな夢かというと、自分が帽子をかぶっている夢だと言う。それだけではなく、隣にもう一匹のカメもいて、一緒に帽子をかぶっている夢だそうです。帽子のそばまで行ったカメは、帽子を見つめたあと、夢心地のカメのそばに戻って一緒に寝ました。
 言葉がシンプルなだけに、カメの目線ひとつで、いろんなことを想像させてくれます。読み終えたとき、子どもたちの爆笑はありません。拍手もありません。ただ最後のページをいつまでも見つめています。
いいですねえ。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『せかせかバービーさん』

『せかせかバービーさん』

1,620円

 絵本を読んでいて、登場する人や動物に「こんな人いる!いる!」「こんなことある!ある!」と家族や知人を思い浮かべることがよくあります。
 『せかせかバービーさん』(ニコラス・オールドランド 作 落合 恵子 訳 クレヨンハウス)はぼくと息子に当てはまり、「ある!ある!」と強く思いました。森に住むせかせかバービーさんは、いつもよく考えずにせかせかと動いています。かじりかけの木をそのままにしたり、使わない木までかじって倒してしまったり。うっかりヘラジカの足までかじってしまいます。そして、とうとうかじった木を自分の体の上に倒してケガをしてしまいました。
入院中の病院の窓から外を見ると、かじりかけの木がちらかっていたり、小鳥たちが家をなくしたりしていることに初めて気がつきました。
せかせかバービーさんは考えました。体を鍛えて本も読んで謝る練習もしました。そして退院したら、すぐにみんなに謝り、家をなくした小鳥たちに新しい家をつくってあげたり、森をきれいにしました。
 ぼくと息子は、この絵本を読んだあと、顔を見合わせて「よく考えてから動かないとな」と頷き合いました。この絵本のおかげで、ぼくも息子も自分を客観的にみることができたのです。でもやっぱりよく考えずに動いてしましますが(笑)

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『はつゆき』

『はつゆき』

1,404円

 ファンタジックな絵本に出会うと、時々なんだか懐かしいような、あったかいような切ないような不思議な感覚になるときがあります。そんな不思議な感覚を体験させてくれるファンタジックな絵本が『はつゆき』(作:西片拓史・岩崎書店)です。
 山と湖にかこまれた村に、今年はじめて雪がふる物語です。二人の子どもが、1年ぶりに船を湖に浮かべて、湖面にこぼれた星屑をすくって樽に集めます。樽の中は光り輝いています。今年は森に探し物に行きます。青白く光るこけを見つけると、ひとつまみ小屋に持ち帰りました。小屋でふたりは、星屑やこけやいろいろなものを鍋に入れて火をかけました。煙突から煙が空にのぼっていきます。東の空がゆっくりと明るくなってきました。この日、しーんと冷たいいつもと違う朝です。朝の始まりとともに空は銀色に輝き始めました。子どもたちは、ひとりまたひとり。大人たちより先に目を覚ましました。何が起きるのかを知っているからです。そう。はつゆきです。
はつゆきが降ったとき、どこかの誰かが降らしてくれていると思えたら、なんだか豊かな気持ちになれそうな気がします。大人も子どもも、それぞれの感覚を味わってみてください。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『でもだいじょうぶ』

『でもだいじょうぶ』

1,598円

 絵本を読み終わってからも、絵本の中に出てくるフレーズを子どもたちが言い合っているシーンに出くわすと、とってもうれしくなります。「おはなしが届いている!」と感じる瞬間でもあります。

 今回、ご紹介したい絵本は、『でも だいじょうぶ!』(作:ジェフ・マック、訳:石津ちひろ・パイインターナショナル)。うさぎとねずみがピクニックに行こうとしたら、雨が降ってきました。うさぎは言いました。「でも、だいじょうぶ!」。雨が降ったら傘をさせばいいんだ。でも、風が吹いて傘が吹き飛ばされてしまいました。うさぎは再び言います。「でも、だいじょうぶ!」。ねずみは次々と起こる大変な出来事に翻弄されます。うさぎは何が起こっても「でも、だいじょうぶ!」。
 さて、この絵本を読むときに、「でも、だいじょうぶ!」のところを、子どもたちが大きな声で一緒に言えるようなリズムで読んでみて下さい。子どもたちの体にこの言葉が入っていきます。絵本を読み終えてから、子どもたちに聞きました。「おともだちがかけっこの時にこけて、泣きそうになってるよ。なんて言ってあげる?」全員が大きな声で「でも、だいじょうぶ!」
続いて、ゴホゴホと無理に咳をして、「あ~、風邪ひいいたかな。しんどいな。なんて言ってくれる?」と聞くと、「でも、だいじょうぶ!」。子どもたちに「でも、だいじょうぶ!」と言われると、本当に大丈夫なような気持になります。
 ステキな言葉をなんのためらいもなく口に出せる子どもたちはステキですね。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『す~べりだい』

『す~べりだい』

1,080円

 読み聞かせの醍醐味は2種類あります。ひとつは、じっくりとおはなしの世界に入り込んでいる子どもたちとの一体感を味わえること。もうひとつは子どもたちと絵本でワイワイと遊びながら、一体感を味わえること。どちらも子どもたちとの一体感を味わえるのが読み聞かせの醍醐味だと思うのですが、今回は子どもたちとワイワイ遊べる絵本を紹介しましょう。
 『すーべりだい』(作:鈴木のりたけ・PHP研究所)です。
ページをめくるたびに、いろんな形のすべり台が出てくるのですが、言葉とすべり台がピッタリなのです。例えば、「すーべりだい」は角度のついた滑る部分がなが~いすべり台。文の大きさまで違っているのです。後ろにいくほど大きな字になっています。あるいは、「すべりだいー」は、低いすべり台だけどなが~い。ページいっぱいに描かれたらせん状のすべり台もあります。このすべり台を読むときは、「す~~~~~~~~~~~~」と息の続く限りがんばります。この絵本は淡々と読んではいけません。面白さが激減します。恥ずかしさを捨てて、強弱をつけてノリノリで読みましょう。
 恥ずかしさを捨てると、読み手は解放されます。
 そして、子どもたちは、ワイワイ、キャーキャー言いながらたっぷりと楽しんでくれます。
子どもたちとの一体感を味わってみてください。気持ちいいですよ。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『かさ』

『かさ』

1,188円

 物も情報もすぐに手に入る便利な時代の今だからこそ、想像しながら自身の内面と向き合うことも必要なことだと思っています。
 文章のない絵本『かさ』(作:太田大八、文研出版社)でそれを味わってみてはいかがでしょうか。女の子が雨ふりの日に傘を持ってお父さんを駅まで迎えに行きます。その様子を絵だけで表現しています。駅まで行く途中、女の子は池の鴨の親子を見つめたり、ショーウィンドウの人形に見とれたり、ほんのちょっぴり冒険気分。そうかと思えば、歩道橋の上をひとり歩く姿や交差点での信号が変わるのを待っている姿は、女の子の心細さを感じます。お父さんとの帰り道は、うれしさと安心感でいっぱい。
 文章がないだけではなく、絵は、墨一色で女の子の傘が朱色で描かれているだけです。にも関わらず、お父さんに会えるうれしさ。ひとりで駅まで行く心細さ。責任感。次々と揺れ動く女の子の心情が、ビンビンと伝わってきて胸がキュンとなります。
 子どもたちには無言のままページをめくるのもよし、問いかけながら読むのもいいでしょう。でもその前に、一人でじっくりと読んでみてください。きっと、子どもの頃の気持ちが蘇って、切なくなると思います。きっと、この本を読んだあとは、子どもにやさしくなれるでしょう。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『よかったね ネッドくん』

『よかったね ネッドくん』

1,512円

 「とにかくやってみよう」。そんな気持ちになる絵本があります。『よかったね ネッドくん』(作:シャーリップ・訳:やぎたよしこ、偕成社)です。
 びっくりパーティに招待されたネッドくん。喜んだのも束の間。会場は遠いフロリダだった。でも、友だちが飛行機を貸してくれました。よかったね。でも、喜んだのも束の間。飛行機は爆発してしまいました。
 その後もネッドくんにもいいこと、悪いことが、間断なく降りかかります。「よかったね」と思ったら、「でも、たいへん!」「でも、たいへん!」と思ったら、「よかったね」の繰り返し。そのたびに、ネッドくんは右往左往せず、淡々として流れに身を任せているようにも見えます。そして最後は、とってもステキな結末が待ち構えています。
 さて、翻って我々大人は未知のことに関しては、失敗したときのことを考えて、躊躇してしまうことが多いのではないでしょうか。そんなときはこの絵本を開いてみましょう。大変そうなことも、振り返れば笑い話になりそうだし、何とかなりそうな気になってきます。
 この絵本からは、「未来はステキだよ」というメッセージが送られているように思います。そうだとしたら、われわれ大人が率先して一歩を踏み出してみましょう。そんなワクワク感を持った大人は、子どもたちからしたら、さぞかし魅惑的でしょうね。目指せ!ネッドくん。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

はっきょい どーん』

はっきょい どーん』

1,512円

シンプルな絵本が好きです。ステキな絵本がいろいろありますが、今回、ご紹介したいのは、『はっきょい どーん』(やまもと ななこ)・講談社)。
 相撲の絵本です。初めて優勝決定戦に挑むのは、小柄な明の海(あけのうみ)。対する相手は、最強の横綱・武留道山(ぶるどうざん)。明の海が土俵に上がります。武留道山も土俵に上がります。塩をまきます。双方、両手をついて、「はっきょい!」明の海がぶつかります。しかし、大きな手で顔をぱちーんとはたかれます。それでもひるまず、まわしをがしっとつかむ明の海。二人がまわしをつかみあっている絵はいかに武留道山が大きいかが良く分かります。武留道山におされます。明の海の足が俵にかかります。耐えに耐えて・・・。
 さて勝負の行方はどうなるでしょう。土俵上の勝負の様子だけを表現したと~ってもシンプルな絵本ですが、すごい迫力。思わず手に汗、握ります。
 子どもたちは、小さな明の海を応援する子も居れば、横綱・武留道山を応援する子もいます。それぞれ「がんばれ!がんばれ!」とエールをおくります。
 著者は相撲好きだそうです。著者の相撲に対する愛情が、ガンガンと伝わってきます。子どもたちも思わず見入ってしまいます。絵から思いが伝わるというのは、こういうことでしょうね。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『おふくさん』

『おふくさん』

1,404円

 特に、『おふくさん』(服部美法・大日本図書)は、隅から隅まで存分に楽しませてくれる絵本です。
 おはなしの内容はこうです。いつもにこにこしている10人のおふくさんが一緒に暮らしています。そこに鬼がやってきました。おふくさんたちは、怖い顔をした鬼に何とか笑ってもらいたくて、あの手この手で笑わそうとするのですが、鬼はなかなか笑ってくれません。しかし、10人のおふくさんによる団体にらめっこには、鬼もたまらず笑い出しました。「笑う門には福来る」を表現している絵本です。このシンプルなおはなしを深めているのは絵です。
 まず、表紙をめくると、10人のおふくさんの名前と特徴が描かれています。本文では、その特徴に基づいた役割を担っているので、それぞれのキャラクターが際立ちます。また、鬼がまだ登場していないのに、よ~く絵を見ると、鬼がすぐそばまで来ていることがわかる箇所があったりもします。とにかく、隅々までしっくりと絵を見ることをおすすめします。そのたびに新しい発見があり、作者の手の込みように思わず笑みがこぼれます。何十回見ても飽きません。
 そうそう。裏表紙だけでなく、カバーに隠れている部分も楽しめるのでお忘れなく。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『地球をほる』

『地球をほる』

1,512円

 子どもは時にとんでもないことを思いつき、実行に移します。ぼくの息子たちが小学生の頃、映画「海猿」に感化され、自作の酸素ボンベを作りました。トイレットペパーの芯の先にビニール袋をつけたものです。息子たちは、トイレットペーパーの芯に口を当てて、お風呂にもぐっていきました。結果はどうあれ、すぐに実行に移すのが子どもたちの愉快なところですね。
 『地球をほる』(川端誠・BL出版)にも、思いついたことを実行に移す子どもたちが登場します。地面に穴を掘って、地球の裏側に行こうとするのです。しかし、地球のことを調べたら、中心部はドロドロとけていて、掘り進めない。ならば、斜めに掘ろう。お姉さんのペンフレンドがアメリカのケンタッキー州にいるので、ななめに掘ってアメリカに行こう。この子どもたちの計画に、両親も大賛成。両親は食料や水の補給など、後方支援に当たります。そしてどんどん掘り進めていくと、とうとうアメリカ人の家族の住む家の庭に出ました。
 日本から穴を掘って来たなんて信じられないアメリカ人が、その穴をのぞくと、さらに信じられないものが見えました。思わず “Oh my god!”

 思いついたことを、すぐに行動に移してみる。子どもたちのこういう感覚を伸ばしてあげたいですね。そのためには、大人が子どもたちの思いつきに相乗りしてみましょう。きっと楽しいことが味わえますよ。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『きょうはみんなでクマがりだ』

『きょうはみんなでクマがりだ』

1,512円

 今夏、ニュージーランドに行って、現地の子どもたちに絵本を読んできました。とっても刺激的でした。さらに、ステキな光景も目にしました。海辺の図書館に行ったときのこと。女性の図書館員が、小学校3年生の子どもたち30人ほどに、絵本の読み聞かせを行なっていました。図書館員は、きれいな声で文章に節をつけながらリズミカルに読んでいました。同じ文章の繰り返しがあるようです。ステキだったのは、30人の子どもたちが文章を同じように口ずさみ、身振り、手振りもつけて楽しんでいたこと。30人の子どもたちがいっせいに絵本の世界に入り込んでいる様子は、本当にステキでした。ついつい日本の小学校3年生の子どもたちと比べてしまいます。あとで、子どもたちや先生に話しかけたら、みんな知っている定番の絵本があるっていいですね。
 その絵本は『We’re Going on a Bere Hunt』。家族でクマがりに行く様子が軽快に、愉快に描かれています。もちろん、日本語でも出版されています。『きょうはみんなでクマがりだ』(評論社、再話:マイケル・ローゼン、絵:ヘレン・オクセンバリー、訳:山口文生)You Tubeでは、作者のマイケル・ローゼン本人が、節つき、アクションつきで、この絵本を朗読している映像を見ることができます。
 日本語では、英語のリズムのようにはいかないかもわかりません。好きなリズムで、楽しく読んでみてください。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『びよよ~ん』

『びよよ~ん』

389円

 あかちゃん向けの絵本があります。主に0.1.2才を対象としていますが、あかちゃんしか楽しめないわけではありません。
 『びよよ~ん』(村田エミコ、福音館書店)という0.1.2才向けの絵本があります。
かえるがしゃがんだ姿で登場。ページをめくると「びよよ~ん」と跳びあがります。同じような展開で、おさるさん、フラミンゴ、カメレオン、たこ、と続きます。
 この絵本は、0.1.2才の子たちはもちろん喜びますが、使いようによっては小学生も楽しめますよ。
 あるイベントでぼくが絵本を読んだときのことです。参加者は親子で約120名。あかちゃんから小学校5年生まで。やんちゃな小学低学年の子たちが最前列に陣取っていました。「びよよ~ん」を読んだあと、その子たちに「こんなのできる?」と聞いたら、ひとりがしゃがむかっこうをしました。「じゃ、いくぞ!」とページをめくると、「びよよ~ん」と跳びあがってくれました。会場中が大爆笑。こうなると、他の小学生たちも、前に出てやってくれるんですよ。120名の前で「びよよ~ん」と
 赤ちゃん絵本をたっぷり楽しんだ小学生たちでした。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『どうするジョージ!』

『どうするジョージ!』

1,512円

ぼくが、絵本の好きな理由のひとつに、「ちゃんとおわらない」というのがあります。最後のページなのに、必ずしもちゃんと終わらない。宙ぶらりんのままにされた感覚になるときがあります。そういうのが、ぼくは大好きです。想像力をめちゃくちゃかきたてられます。

 さて、今回、ご紹介したい絵本は、「どうするジョージ!」(作・クリス・ホートン、訳・木坂涼、BL出版)です。飼い主のハリスが、犬のジョージに言いました。「ちょっと出かけてくるけど、留守の間、いい子にしていられるかい?」ジョージは「もちろん!」と答えます。ところが、いい匂いのケーキを発見。どうするジョージ?あら~、食べちゃった!猫を見つけると・・・追いかけちゃった!花壇の花を見ると・・・掘っちゃった!誘惑には勝てないジョージなのでした。
 ハリスが帰ってきて、我に返ったジョージは、しょんぼりと反省。それからは、誘惑に負けないジョージなのでした。我慢、我慢。しばらくは、いい子のジョージだったのですが、ジョージが一番ワクワクするゴミばこを見つけました。
どうするジョージ!どうするジョージ!
ジョージの姿は、悪気はまったくないのでけど、ついつい誘惑に負けてしまう子どもたちとピッタリ重なります。感じたまま動いてしまう子どもたちだから、憎めないんですよね。
 さて、ジョージは、ゴミばこをどうしたのでしょうか。ちゃんと終わる?終わらない?

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『なつのいちにち』

『なつのいちにち』

1,000円

 梅雨が終わると、暑い夏がやってきます。そんなときに是非、読んでいただきたい絵本が『なつのいちにち』(はたこうしろう・偕成社)。
 ここ最近の夏は、極端な猛暑のため、熱中症にならないように気をつけて、冷房の効いた家の中で過ごすことの方が多いかもしれません。それでも、子どもたちには「夏」の思い出を作ってほしいです。夏の思いでは特別です。なぜなら、体中のあらゆるところに、しみ込んでいるからです。
 例えば、青々と繁った草の匂い。ジリジリと腕に突き刺す強い陽射し。風で揺れる木の音。セミの声。夕立で濡れたゴム草履の足元。麦わら帽子をかぶったときのチクチク感。大人になった今でも、鮮明に覚えています。特別なことは何もないのだけれど、「夏」が五感を通じて体にしみ込んでいます。
 この絵本も何も特別なことはない、ある少年の夏の一日を描いたものです。にもかかわらず、絵本の中からいろんな「夏」の感覚があふれ出します。
特に、40歳以上の人は、体中から夏が蘇ってくると思います。今のこどもたちにも「夏」の感覚を体にしみこませてあげたい。そして、彼らが大人になったとき、『なつのいちにち』を読めば、体中からその感覚が蘇ってくるようになるとうれしいな。
 この絵本の舞台は田舎ですが、都会でも「夏」はあるはずです。是非、子どもたちと一緒に「夏」をさがして、体にしみ込ませてください。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『ぼくがとぶ』

『ぼくがとぶ』

1,404円

 新年度のバタバタした生活から比べると、子どもも大人も、少し落ち着いてきた頃でしょう。そんな時期に読んでもらいたいのが、『ぼくがとぶ』(佐々木マキ、絵本館)。
 男の子が作業場で飛行機をつくっています。完成して飛んだと思ったら、墜落。でも、挫けません。もう一度、修理をして、再びチャレンジ。今度はうまく飛びました。お父さんとお母さんは、地上から飛行機を見上げ、呆気にとられつつ、最後には手を振っています。そして男の子は、どんどん遠くに飛んでいくのです。成功するまで頑張る男の子のロマンを感じますね。
男の子が飛行機を作っている作業場では、こんな文章があります。「とうさんも、かあさんも、しらないんだ」子どもたちは、だんだんと親の知らない世界を広げ、いつか、親の手の届かない所に飛び立っていくのでしょうね。地上から呆気にとられつつ、見送っているお父さんとお母さんは、「しゃあないなあ」という気持ちかもわかりません。これくらいの距離感がちょうどいいかもしれませんね。子どもは、そうやって親の手を離れながら、どんどん大きくなっていくのでしょう。
 裏表紙の自信に満ち溢れた男の子の姿がそれを物語っています。新しい環境に慣れた子どもたちは、さらなる未知の世界に飛ぼうとしているのかも。呆気にとられながら、応援してあげましょう。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『きょうはマラカスのひ』

『きょうはマラカスのひ』

1,512円

はまる絵本というのがあります。『きょうはまらかすのひ』(樋勝朋巳、福音書店)がそれ。この絵本はクセになります。
 犬なのか、人なのか、よくわからない3人が登場します。パーマさんとフワフワさんと、クネクネさん。3人はマラカスが大好き。クネクネさんのうちに集まって、3人で発表会をします。ひとりひとりがマラカスを振りながら踊りを披露。これが全然、かっこよくないのですが、それぞれの特徴が出ていて、笑ってしまいます。お昼をはさんで、最後にクネクネさんの発表ですが、おなかいっぱいになったクネクネさんは失敗。見ている2人はいつの間にか寝てしまうという状況。部屋にこもって泣くクネクネさんを2人がなぐさめます。気を取り直して、もう一度マラカスを振って踊りを披露するクネクネさん。今度は成功です。
 この絵本は、大爆笑するような類のものではないのですが、ページをめくるたびに「クックック」と笑ってしまう絵本なのです。そして、なぜか、また見たくなり、ページをめくると「クックック」。この繰り返しです。これがけっこう心地よいのです。完全にクセになります。3人の謎に包まれた背景も気になります。なぜかタイツにこだわりをもっているクネクネさんも気になります。絵本の中では、何ひとつ解明されていません。だから、また見てしまうのですが、見るたびに、不思議にやさしい気持ちになれるのです。この気もちを分かち合える仲間がほしい。気になる人は、読んでみてください。きっと、クセになるから。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『おおかみだ!』

『おおかみだ!』

1,188円

絵本にはストーリーに引き込まれたり、絵に魅入ったりする作品も多いですが、アイデアに脱帽!という絵本もあります。
 『おおかみだ!』(ポプラ社・文:センドリック・ラマディエ、絵:ヴァンサン・ブルジョ、訳・谷川俊太郎)がそれ。
 絵本の中から、おおかみがやってくるんです。文章はアドバイスになっています。「はやく!ページをめくって、おいはらうんだ」。アドバイスに従って、急いでページをめくると、あらあら!おおかみがもっと近づいてきた!ページをめくるごとに、おおかみは、どんどん近づいてきます。アドバイスは、本をかたむけたりさかさまにしたり。何とかおおかみを追い払おうとしてくれます。
しかし、おおかみはどんどん近づいてきて、にっちもさっちもいかなくなった最終ページ…。どうなるのでしょう。実際に絵本を読んだときのお楽しみにとっておきましょう。
 とってもシンプルな内容なのですが、絵本そのものをめくったり、ゆすったりするなど、目からウロコのアイデアです。しかも、文章は直接読み手に語りかけるアドバイスなので、読み手が絵本に操られているようなのです。もう脱帽です。
 子どもたちは、ページをめくるごとに間違いなく絶叫します。この絵本にはぼくも子どもたちも、やられました。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『みなみのしまのサンタクロース』

『みなみのしまのサンタクロース』

1,404円

 クリスマスの季節です。サンタクロースの絵本は、いろんな種類のものが出ています。どれもステキな絵本です。
 今回、ご紹介するのは、サンタクロースのイメージを大きく変える絵本です。「みなみのしまのサンタクロース」(佼成出版社・作:斉藤洋、絵:高畠純)
サンタクロースは、雪国からソリに乗ってやってくるイメージが強いです。しかし、北半球が冬のとき、南半球は夏です。南半球のサンタクロースはどんな様子なのでしょう。なんと、海水パンツに、派手なアロハシャツ。足元はサンダルばきです。いくら夏と言っても、かなりラフなサンタクロースです。トナカイもいません。代わりにカンガルーが荷車を引っ張ります。こんなのんびりムードのサンタクロースですが、ちゃんと助手がいるのです。
 コアラ。
 このコアラが助手のくせにまったく役に立ちません。さぼったり、じゃまをしたり、マイペースです。それでも、サンタクロースがコアラを助手にしているのにはわけがあります。ひとりで荷車に乗るのはさみしいし、ふたりの方が楽しいからなんですって。
 子どもたちは、サンタクロースのイメージが大きく異なるので、戸惑うかもしれませんが、そんな様子をウッシッシと見ているのも楽しいではありませんか。
 師走のあわただしい時期にこそ、この絵本を広げて、のんびりした気持ちになってください。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『ぞうのボタン』

『ぞうのボタン』

972円

 字のない絵本があります。今回は『ぞうのボタン』(冨山房・作:うえののりこ)をご紹介します。
 この絵本は、ページをめくるときの醍醐味をたっぷりと味わうことができます。最初のページをめくると、ぞうのお腹の中から馬が登場。今度は馬にもボタンがついています。ボタンを外すと・・・。次々といろんな動物が出てきます。
 さて、字のない絵本だからどう読むのでしょうか。何も言わずにページをめくるだけにしておき、すべて子どもたちの想像、反応に任せるというのもいいでしょう。ぼくは、より楽しんでもらいたいので、ちょっと演出をします。「あら?ぞうさんにボタンがついてる。ちょっと外してみようか」などと言って、ぞうのぼたんのところに指をかけて、ひとつずつ外す動作をします。そして、「何人が入ってるんやろ?」ともったいぶりながら、ページをめくるとこどもたちは「え~っ!」と大歓声。描かれているボタンに指をかけて外す動作をするのがミソです。
 ちょっとした演出で子どもたちの想像はさらに膨らみます。しかも、出てくる動物は段々と小さくなっていきます。子どもたちもそのことに気づき、より小さいものを想像します。そして最後に出てくるものは・・・?
 是非、子どもたちと一緒に楽しんで下さい。字がないからこそ、読み手の個性がより活かされる絵本です。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『ふたごのたこたこウィンナー』

『ふたごのたこたこウィンナー』

1,296円

 好みの絵というのがあります。ぼくは、西村敏雄さんが描く絵がとても好きです。
 写真で拝見する西村敏雄さんご本人は、とてもダンディな方なのですが、『もりのおふろ』、『バルバルさん』(いずれも福音館)など、どの作品の登場人物も、“ほわ~ん”として、争い事とは無縁の雰囲気です。ストーリーもあったかくて、やさしさが伝わってくるものがほとんどです。 数ある西村さんの作品の中から、『ふたごのたこたこウィンナー』(ひさかたチャイルド・作:林木林、絵:西村敏雄)を紹介します。イライラも怒りも忘れてしまうほど“ほわ~ん”がいっぱいの絵本です。
 赤いふたごのウィンナーが、お母さんに箸でつままれようとして、逃げるのですが、これがのんびりしていること。途中で隠れたり、休んだり。最終的に、逃げ込んだ先は、弁当箱の中。それって、お母さんが箸でつまんで入れようとしていたところです。 なんともとぼけたふたごのウィンナーですね。
 絵本を見ている子どもたちは、赤いふたごのウィンナーが隠れているところを探し出すと大喜びです。トマトやさくらんぼの皿に隠れていたり、弁当箱の包む布の柄に紛れ込んでいたり。 最後に逃げ込んだ弁当箱で、見つかってしまったときのふたごのウィンナーの表情に、子どもたちも保育士さんも、にこにこ顔顔で“ほわ~ん”とします。
 西村敏雄さんの描いた表情やタッチが、“ほわ~ん”を引き出すのだと思います。好きだな、この“ほわ~ん”。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『とんねる とんねる』

『とんねる とんねる』

1,404円

  絵本を読むときの楽しみのひとつに、子どもたちの愉快な反応があります。例えば、ページをめくった瞬間に子どもたちが一斉に「え~っ!!」と驚く様子は、絵本の世界に入り込んでいる証拠。読み手もうれしくなる瞬間です。ちょっとした演出を加えることで、さらなる反応を引き出すことができます。
 「とんねる とんねる」(大日本図書・岩田明子)の場合を紹介しましょう。人間の男の子が体でとんねるをつくり、ヘビがくぐる。次にヘビが体でとんねるをつくり、タコがくぐる。さらにカエル、キリンが登場。最後にもぐらが土の中にとんねるを掘って、「くぐってくださ~い」と言うと、登場人物はみんな「えっ?」と驚きます。そこで、そのページを開いたまま子どもたちに聞いてみてください。これが演出です。
「誰がくぐれると思う?」
「カエル」「ヘビ」という声がまっさきにあがります。ページをめくると、カエル、ヘビに続いて、タコも男の子もくぐっています。ここで既に、子どもたちからは「え~っ!!」という反応が出ます。
さらに次のページでは、キリンが細い首だけをとんねるに入れています。すかさず、「やっぱり、キリンは首だけしか入らないね」と言ってみてください。子どもたちが、うん、うんと頷くのを見極めてから、おもむろにページをめくると、そこには、なんと体中を細くして、とんねるをくぐっているキリンが出てきます。
子どもたちが全員が、「え~っ!!!!」となります。
 是非、子どもたちの反応を楽しんでみてください。クセになりますよ。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『どっとこどうぶつえん』

『どっとこどうぶつえん』

864円

 子どもたちが、大盛り上がりになる素敵な新刊絵本が登場。『どっとこどうぶつえん』(福音館書店・中村至男)です。タイトルにある「どっと」というのは画素のことです。表紙には、粗い画素数でゾウが描かれています。つまり、大きめの四角形のマス目に色を塗って描かれています。一見すると色盲検査の絵のようです。写実的なゾウとはかけ離れています。本来、人間はものを認識するのに、はっきりとしたゾウの姿をとらえて認識しているのではなく、ぼんやりとしか見えていなくても、それがゾウだと認識できます。想像で補間しているわけです。
 だとしたら、想像力豊かな子どもたちに、粗い画素数で表現した絵を見せたら、より想像の世界が広がるではないか、という発想でできたのがこの絵本です。文字のない絵本です。ページを開くごとに、粗い画素数でいろいろな動物が登場します。子どもたちは、ページを開いた瞬間に、「キリン!」「ライオン!」などと、次々と当てていきます。その反応の速さたるや、すごいです。試しに大人の人に読んでみると、ほとんどが、子どもたちよりも反応が鈍いです。
 子どもたちと、より楽しむ読み方があります。開いたページはじっくりと見せますが、ページを開くときだけ、スピードを速くするのです。こうすると、子どもたちは考える間がないですから、より反応が早くなります。その結果、普段、おとなしい子も、一緒になって動物の名前を口にします。是非、お試しを。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『ワニあなぼこほる』

『ワニあなぼこほる』

1,404円

ぼくは、保育園や幼稚園の園庭をあちこちで遊んでいる子どもたちの様子を見るのが好きです。一心不乱に」ダンゴムシをさがしている子もいれば、ロープを引っ張りながら、ただただ走り回っている子もいます。わけのわからないことを必死でやっている姿には、思わずプッと吹き出してしまいます。
 「ワニあなぼこほる」(石井聖岳・イースト・プレス)のワニさんたちの姿が、園庭で必死に遊ぶ子どもたちと重なります。
一匹のワニが、小さなスコップをもって、あなぼこを掘ります。それを見かけた他のワニたちも、大きなスコップで「あなぼこ、あなぼこ、あなぼこ!!」と言いながら掘ります。さらには、ショベルカーを持ってくるワニ。ダンプカーを持ってくるワニ。さながら、大規模な工事現場です。一匹のワニが、「はらへった」と言うと、「オレも」「オレも」と一斉に昼飯。食べるだけ食べたら、昼寝。昼寝から起きたら再び、工事の続き。そして、ようやくできあがったのは、大きな大きな池。そこに、一匹の小さなきんぎょを放します。ワニたちが「うおお~」と拍手。
わけのわからないことに、夢中になって取り組んでいるワニさんたちの姿は、とても健全に感じます。目的なんてどうでもいい、とにかくやりたい。やってること自体が楽しい、なんだか愉快。
大人の我々が忘れかけていることですね。

NPO法人ほがらか絵本畑
絵本を読む人・しんちゃん

『ゆきだるまはよるがすき!』

『ゆきだるまはよるがすき!』

1,365円

 子どもたちは、その豊かな想像力で、絵本の世界を現実の世界にも広げていきます。
 「ゆきだるまはよるがすき!」(文:キャラリン・ビーナー、絵:マーク・ビーナー、訳:せなあいこ、評論社)という絵本を読んだときの子どもたちの反応がとても愉快です。
 朝になると、せっかく前の日に作った雪だるまがヨレヨレになっているので、少年はこう考えました。「一体、夜の間に何があったんだ」(子どもたちは、興味津々で絵本を食い入るように見ています。)実は…。「雪だるまはね、きっと動き出したんだ。(え~っ!!)と言いながら、子どもたちはさらに絵本に食いつきます。
(雪だるまは、みんなで輪になっておしゃべりしたり、かけっこやスケート大会を始めます。さらには野球をしたり、そりあそびをしたり、もうとても楽しそうにしています)
明け方まで遊んだ雪だるまたちは、さすがに遊び疲れて、それぞれの家に帰っていきます。家にたどりついた雪だるまたちは、もうヨレヨレ。
だから、雪だるまの姿が変わっているのは、とても楽しい夜を過ごした証拠なんだって。
 「へぇ~、そうなんや」とうれしそうに納得している子もいます。絵本の世界が、現実のせかいとだぶるとき、さらに想像は膨らみます。

NPO法人ほがらか絵本畑
ブックドクターしん(三浦伸也)

『どっちのてにはいってるか?』

『どっちのてにはいってるか?』

630円

 今月は「どっちのてにはいってるか?」(作・絵:新井洋行、偕成社)を紹介します。
 絵本に登場する男の子が両手を握って「どっちのてにはいってるか?」と言います。読み手のぼくは、絵本の男の子の手を交互に指さしながら、「こっちだと思う子?」と聞きます。ページをめくると、左手にミニカーがありました。当たった子たちは、大喜びです。
次に登場するお母さんの右手にはあめ玉。左手、右手ときたので子どもたちは、次に登場するおとうさんの左手入っていると思います。ところが、入っていたのは右手。クレヨンが入っていました。落胆する子どもたちの様子が愉快です。
 この絵本は本屋に行くと、あかちゃん絵本の棚に置いてあることが多いですが、ぼくは3歳以上の子どもたちによく読みます。読む前に、ちょっとした仕掛けをしておきます。小さなきれいな石を握っておくのです。絵本を読み終えたら、両手を握って「どっちの手にはいってるか?」と聞きます。5歳児くらいになると、「どっちもはいってへん!」と言う子がかなり多いです。ぼくは「なんで知ってるの」という顔をしながら、指を1本ずつ開けていきます。てのひらからきれいな石が出てきたときの、子どもたちの驚きようには、ついつい笑ってしまいます。ちょっとした工夫であかちゃんから年長まで楽しめます。

NPO法人ほがらか絵本畑
ブックドクターしん(三浦伸也)

『クリスマスのふしぎなはこ』

『クリスマスのふしぎなはこ』

840円

 クリスマスの季節です。この時期は『クリスマスのふしぎなはこ』(文:長谷川摂子、絵:斎藤俊行、福音館)をよく読みます。
男の子が見つけた小さな箱をのぞくと、サンタさんが眠っている。しばらくしてまたのぞくと、サンタさんがいよいよ出発。夜の箱をのぞいてみると、サンタさんは知らない町の上を飛んでいた。寝る前にもう一度、のぞいてみると、ぼくの町の上を飛んでいる。急いで布団に入って目をつむった。最後のページは、朝、目がさめたら、プレゼントがおいてあった、というお話。
 ぼくは、最後のページを読まないことが多いです。子どもたちは、口々に「え~っ!サンタさん来たの?」「どうなったの!」と、その後の展開を知りたがります。
ぼくが、「さあ、どうなったと思う?」と聞くと、「プレゼントもらった」とか「サンタさんはその子に見つかった」というような様々な答が出てきます。
 クリスマスの朝、子どもたちが嬉々として保育園に来る様子を確認して、「クリスマスのふしぎなはこ」をもう一度、読むというのはどうでしょう。
もちろん、このときは最後のページまで、読んであげましょう。子どもたちは、絵本と自分の体験をダブらせて見るようになるので、より深く楽しむことができます。子どもたちに、物だけではなく、しあわせな気持ちをプレゼントするのがサンタさんだと思います。
 そうだとしたら、保育所・幼稚園の先生もサンタさんですね。

NPO法人ほがらか絵本畑
ブックドクターしん(三浦伸也)

「ぼくのおばあちゃんのてはしわしわだぞ」

「ぼくのおばあちゃんのてはしわしわだぞ」

893円

 保育園の祖父母参観では、いつもは興奮気味の子も、こころなしかゆったりと安心感を満喫しているようでもあります。その祖父母参観で、こんな絵本を読みました。『ぼくのおばあちゃんのてはしわしわだぞ』(そうまこうへい、架空社)。おばあちゃんの手は、どうしてしわしわになっちゃんたんだろう。お父さんは大活躍した証拠だと答えます。
あの手で子どもを育て、いっぱい抱っこして、料理して洗濯をしてお掃除をしてきたんだもの。最後は、おばあちゃんが転ばないように、孫の男の子がおばあちゃんのしわしわの手をしっかりと握って散歩に出かけます。
 最初に絵本のタイトルを読んだときは、大爆笑していた子どもたちですが、そのうち全員がシーンとしてきいてくれていました。
 子どもたちの後ろでは、そんな様子をおばあちゃんやおじいちゃんたちが、優しい表情で見守ってくれています。絵本を読み終えたぼくは、こう言いました。
「大活躍したおばあちゃん、おじいちゃんの手を握ってそれぞれのお部屋に戻ろう。」子どもたちもおじいちゃんおばあちゃんもみんな、手をつないで満ち足りた表情でホールを後にしました。
 おばあちゃんおじいちゃんの存在は、子どもたちの素直な心を引き出してくれました。何も言わずに、ただしわしわの手だけで。年を重ねるって、ステキだなあと感じた光景でした。

NPO法人ほがらか絵本畑
ブックドクターしん(三浦伸也)

「ぴょんたのたいそう」

「ぴょんたのたいそう」

1,365円

 しかけ絵本で、ぼくのお気に入りの絵本があります。

『ぴょんたのたいそう』(作・ルース・ティルデン、大日本絵画)です。
しかけ絵本というと、複雑なものから奇想天外なものまで、いろいろなものがありますが、『ぴょんたのたいそう』は、 とってもシンプルです。
 主人公のかえるのぴょんたくんが各ページで、体を左右に動かしたり、前後に倒したり、体操をする絵本です。ぴょんたくんの動きは、各ページについてある1㎝×2㎝四方の取っ手を、読み手が動かす仕組みになっています。
取っ手を左に動かせば、ぴょんたくんの体は右に倒れ、右に動かせば、ぴょんたくんの体は左に倒れます。この絵本の何が気に入っているかというと、シンプルさです。
つくりがシンプルなので、動かす回数やスピードは、読み手が自在に操作できます。つくりだけではなく、絵やストーリーもシンプルなのです。シンプルな作品は、その分、読み手の自由度が大きくなります。それによって、子どもたちの反応の幅も広がります。
 是非、子どもたちに読んでみてください。
 あまりのシンプルさと、子どもたちの反応の多様さに、びっくりすると思います。何よりも、作品のシンプルさが、底抜けの明るさにつながっているのがいいですね。シンプル イズ ベスト。

NPO法人ほがらか絵本畑
ブックドクターしん(三浦伸也)

「えらいえらい!」

「えらいえらい!」

1,050円

 子どもの一言によって、大人の視線でしか子どもを見ていなかったことに気づくことが度々あります。

『えらいえらい!』(文・ますだゆうこ、絵・竹内通雅、そうえん社)という絵本を幼稚園で読みました。最初のページを開くと、大きなくつが出てきます。「くつは えらい なんで えらい?」次のページでは「まいにち いっぱい あるくから」とあります。そして、次々とカバやカンガルーや傘などが出てきて、「えらい えらい なんで えらい?」と聞きます。子どもたちは、口々に「大きいから」、ジャンプするから」、「雨をよけるから」などという言葉が出ます。カンガルーが出てきたときは、「ボクシングができるから」と思わぬ反応もあり、ページをめくるたびに、子どもたちの反応で楽しめる絵本です。
 読み終えてから、3歳児クラスの子に聞きました。「みんな えらい えらい。なんで えらいの?」そしたら、ひとりの男の子がこう答えてくれました。「がんばってようちえんに来てるからえらいの」
ぼくはしばらく言葉が出ませんでした。ついつい子どもたちに、してあげることばかりを考えていました。子どもたちが幼稚園に来ていることは、当たり前の前提でした。でも、子どもたちは、がんばって幼稚園に来ているのですね。
 えらい、えらい!

NPO法人ほがらか絵本畑
ブックドクターしん(三浦 伸也)

「じゃぐちをあけると」

「じゃぐちをあけると」

840円

おはなしは、何も絵本の中だけのものではありません。絵本を飛び出して、どんどんと広がっていきます。
 「じゃぐちをあけると」(しんぐうすすむ・福間書店)を読んだときのことです。
 この絵本は、水道の蛇口をあけると水が出て、そこに、指をあてたり、スプーンを当てたりして、水がいろんな形にはじける様子を、ダイナミックに描いています。
 読み終えてから、子どもたちに「こういうの、やってみるとおもしろいよ~」と言いました。すると、子どもたちは、声を合わせて「あかーん!」なぜ、ダメなのかと聞くと、「おこられる~!」
 ぼくは、散々、「おもしろいぞ~」と、子どもたちにたきつけました。
 後日、先生から報告がありました。園児たちに、各自スプーンを持ってきてもらって、プールの時間に、思いっきり蛇口で遊んだそうです。そのあと、子どもたちは、この絵本を何回も見るわ、見るわ。
 あるいは、この絵本を読んだあとに、保護者に「お風呂に入ったときにでも、できるだけ蛇口で遊ばせてあげてほしい」と伝えた園もありました。
 絵本のおはなしを、いかに広げていくか、保育士さんの腕次第です。
 どうか、子どもたちの、しなやかな想像力を養ってあげてほしいと思います。

 

NPO法人ほがらか絵本畑
ブックドクターしん(三浦伸也)

「おむかえ」

「おむかえ」

410円

園長先生が、保護者総会などで、保護者向けに絵本を読む保育園があります。その園長先生に、今年は、こどものとも年中向き4月号『おむかえ』をご紹介させていただきました。
 動物たちの保育園が舞台です。
 夕方、次々とお迎えがやってきます。キツツキのおかあさん、おさるのおとうさん、モグラのおじいちゃん。お迎えの仕方が、それぞれで、これがおもしろい。
 そして、みんなお迎えが来る中、クマだけはお迎えが来ません。雨も降ってきました。雨で川を渡れなくなったクマのおかあさんが、ズブ濡れになって、やっとお迎えに来ました。
 なぜ、この絵本を紹介したのか。
 6月は、子どもたちも保護者も、ようやく保育園の生活にも慣れてきた頃です。
 でも、子どもたちにとって、お迎えの時間が待ち遠しいことは、入園当初と変わりありません。
 保護者の方々にとっては、夜、家での用事がたくさんあるので、子どもたちを、さっさと連れ帰ろうとする気持ちもよくわかります。
 でも、子どもたちは、このお迎えの時間の一瞬を、とても楽しみに待っているということを知っていただきたいのです。
 こういうことを伝えるのに、絵本は押しつけがましくないからいいのです。しかも、大人になってから絵本を読んでもらうこと自体も新鮮。きっと思いが届きます。

NPO法人ほがらか絵本畑
ブックドクターしん(三浦伸也)

「しげちゃん」

「しげちゃん」

1,365円

私の絵本紹介の特徴として子どもたちの葛藤が中心にあります。それは子どもたちが幸せに暮らしていくために、自尊心や人への信頼感を乳幼児期に育んでいき、じぶんのことがすき!と思える自己肯定感。友だちの事もほっとけないと感じる他者にたいする尊敬。それらを蓄えていきながら、人としてごく当たり前の“人を大事にする感性”を育んでいく同行者でありたいからです。
 今回紹介の『しげちゃん』は女優の室井滋さんの幼少期、しげるという名前で嫌な思いを体験しながらも、ある日お母さんに「なまえをかえたいの」と話したことをきっかけに、命名のいきさつやわが子の存在を大事に思う名前に込められた親の願いなどを教えてもらい、しげちゃん本人が嫌な気持ちを吹っ切って、“このなまえでよかった!”とその小さな心に決意をみなぎらせていくストーリーです。絵も長谷川義史さんの魅力がしげちゃんの気持ちをより引き出しているように見えます。
 この絵本は、クラスで友だちの嫌がることを平気で言ってしまう子どもたちの姿から、子どもたちと一緒に何回か読んでいった大阪市の保育士さんの実践を聞き、是非紹介したいなと思いました。特にラストのしげちゃんの変革は、見ている子どもや大人に勇気を吹き込んでくれます。名前をちゃかしてからかう周りの子どもがいなかったら、しげちゃんの悩みも生じませんが、大人社会の差別構造がある限り子どもの世界にも厳しい状況は生じてしまいます。乳幼児に関わる私たちが「人を尊重するとは?」を他人事ではなく子どもたちや保護者の皆さんと一緒に考え続けていきたいですね。絵本はその役割を担ってくれる最適の教材ですね。

絵本から子どもの人権を考えるグループ“はじめの一歩”杉本節子

「ぼくがラーメンたべてるとき」

「ぼくがラーメンたべてるとき」

1,365円

絵本紹介を担当していて感動する事に、1冊の絵本から子どもたちが心を動かしている姿に出会うことです。作者のメッセージを読み手が引き継いで一緒に考えていく機会となり、又子どもたちも絵本を通して色んな人たちの事に思いを巡らせ感性を育んでいくのですね。今回の絵本実践は、豊中市立蛍池人権まちづくりセンター職員の橋本知己先生です。

 センターでは地域の小学生が放課後活動をしています。その中で人権学習があるのですがよく絵本を用います。大人目線では気づかない所に子どもの意外な発見があり、子ども自身の振り返りや、お互いを知りあう機会に繋がるからです。この絵本は何年か前、新潟中越地震があった時に同じ日本の中で起きている出来事に目を向けてほしいとの思いから読みました。その後、東日本大震災や平和の取り組みにも考える機会として読んでいます。
 自分がラーメンを食べているその瞬間、隣の家の子、隣町の子、そして隣の国、ある国と場面が進んでいきます。隣の家、隣の町の子はテレビを見ていて、野球をしていてとごく身近な場面ですが、ある国では水汲みの手伝い、パンを売る子、そして倒れている子どもと描かれていきます。子どもたちは初めは笑いながら見ていますが、だんだん真剣になり、特に最後のページになると「戦争で死んだんや!」「だって後ろの建物つぶれてるやん」「たべものもなくなったんやで」など、口々に感じた事を伝えていきます。今こうしているときに同じ地球上で起こっている出来事の厳しさに疑問や不安の入り混じった反応でした。でも子どもたちの日常から、絵本で知ったり感じたことをその心の中に蓄えていっている事を感じています。

絵本から子どもの人権を考えるグループ“はじめの一歩”杉本節子

「ないた」

「ないた」

1,360円

どちらの幼稚園や保育所でも後半の保育を迎え、子どもたちも当番活動や遊びにも自信
を持って誰かの為に自分が役立っている事を感じたり、その分仲間との関係でもお互いよく知り合ってきたからこそ主張していく姿を見せている事でしょう。今回届いた絵本実践は、子どもたちが持つ価値観を揺さぶっている実践と言えます。ここからは泉南市立くすのき幼稚園の吉田美智代先生の実践です。
 「泣くのは弱虫やで」「男は泣いたらあかん」と言う子どもたちの言葉や泣きたい気持ちを抑え無理に笑う姿があり、今回紹介の絵本『ないた』と言う絵本を繰り返し読んでいった。読み終えた後、「おれ、泣いたことない」と自慢げに答える子がいた。2~3回読んでいくと“けんかしてないた”“しかられてないた”と言う場面で、友だちと顔を見合わせ「これはむっちゃあるでな」と共感する姿、“おわかれのときないた”と言う場面では、「ないたことがない」と言っていた子が「いちごぐみ(4歳児)のときないた」とつぶやく。別の子が「ぼく、ないたことない」と言うと、すかさず友だちに「あるやん」と返されて、泣くことはあかんと思っていた子だけに自分の弱さを指摘されたと思い元気がなくなった。その時、「僕もお母さんと一緒に帰りたくて泣いた」と言う友だちの言葉に救われホッとした顔になっていた。『なく』と言う共通の経験を通して、自分の思いと友だちの思いを重ねている子どもたちの姿に成長を感じたり、誰だって泣くし、泣くことは恥ずかしい事でも、弱い事でもないと言う事をこの絵本を通して伝わったかなと思った絵本実践でした。

絵本から子どもの人権を考えるグループ“はじめの一歩” 杉本 節子

「きこえる?きこえるよ」

「きこえる?きこえるよ」

1,200円

 本屋さんで見つけた1冊の絵本、この絵本を選んだ理由は、題名の「きこえる?きこえるよ」に目が止まり、開いてみると字がなくて絵を見て聞こえてくる音を想像するところがおもしろいと思い、3歳児クラスで読んでみました。
 いつもは「静かに見てね」と言いながら読んでいく絵本を「今日は見て思ったこと、聞こえてきた音や声をいっぱいしゃべっていいよ」と言って、ページをめくりながら「へぇー、そんな声が聞こえたの。ふーん、そんな音もきこえたの」と、子どもたちの声をひろっていきました。その中で、最近思うように言葉が出ないことに気持ちが沈んで、あまりしゃべらなくなっていたKちゃんが、鳥の声に反応して「ぴよぴよ」と小さい声で言っているのが聞こえました。よく見ると、絵本の中に小さいひよこが描かれていて、「ほんとだ、先生も聞こえたよ」と言うと、Kちゃんはにっこり笑ってくれました。子どもたちの声を通してじっくり絵本を楽しむことができたので、最後に「みんなが絵本を読んでくれたので、とっても楽しかった。ありがとう」と返しました。
 以前に5歳児クラスで視覚障害のあるYちゃんとの出会いがあったのですが、Yちゃんならこの絵本をどう楽しむかな、友だちの楽しそうな声がいっぱい聞こえてきたら、イメージが広がり、いろんなものが見えてくるんじゃないかなと思いました。
 この絵本は読めば読むほど、子どもたちの声が広がってくるのです。

絵本から子どもの人権を考えるグループ“はじめの一歩” 杉本 節子

ゆうちゃんとめんどくさいサイ

ゆうちゃんとめんどくさいサイ

840円

 今回の絵本は生活面を捉えた絵本です。毎日の生活の中で食事、排泄、着脱、また手を洗う、歯を磨くなど自立に向けての準備段階を、大人との信頼関係を基に育んでいきます。2歳前後より「自分でするの!」と言う時期を迎え、徐々にその子のペースで基本的な生活習慣を身に付けていきます。しかし、子どもにはペースがあって大人の思い通りに行かないことがしばしばです。今回紹介の「ゆうちゃんとめんどうくさいサイ」では、見事に子どもの気持ちに立ったところ生活を捉えている魅力があります。
 今回の絵本実践は能勢町立ふたば園の大家雅子先生です。

 朝、ゆうちゃんが起きるとお母さんが言いました。「洋服に着替えて歯を磨きなさい!」でもゆうちゃんは「やぁだよ、めんどくさい」。朝の支度をしないゆうちゃんにお母さんはしびれを切らし、ガミガミと声をかけます。とうとうゆうちゃんは家を出ていきます。絵本を見ている子どもたちは主人公に親近感を持ち、ぐいぐい話の世界に入ります。そんなゆうちゃんがたどり着いたのはめんどくさいサイの住む家。ゆうちゃんはめんどくさいサイの子どもになりました。でもそこでもあれこれ注意を受けて大爆発!「ああうるさい!あれするなこれするなと、ぼくはめんどくさいサイの子にならない」主人公の痛快なセリフに子どもたちは共感!このページをめくる瞬間一斉にセリフを叫びます。子どもたちの日常と重なり、心の爆発を解き放ってくれるようです。「ぼく(わたし)は自分のペースで自立していくんだよ」って大人にメッセージを送ってるようにも感じられます。子どもたちの反応も楽しみながら読んでみて下さいね。必ず「もういっかいよんで」と言う絵本になりますよ。

絵本から子どもの人権を考えるグループ “初めの一歩” 杉本 節子

おへそのあな

おへそのあな

1,365円

 子どもたちが、自分の事を肯定的に感じ取れるにはどんな絵本があるかなと迷っていませんか。前半のこの時期、友だちと共感しながらぼくって(わたしって)おうちの人や先生に大事にされていると実感してほしいのですね。そんな時とっておきの絵本があります。
 今回は地域の保育所や子育て支援センターに行き、絵本の読み聞かせの活動をしているグループ「初めの一歩」の横瀬幸子さんの実践を紹介します。以下横瀬さんの原稿です。

 先日、「おへそのあな」という絵本を5歳児の子どもたちに読みました。絵本を見るなり「あっしってる」「これといっしょ」と本棚の絵本を持ってくる子、また別の子が「おかあさんのおへそと、赤ちゃんのおへそがつながってるねんで」と教えてくれます。さあ読もうと絵本を前に掲げると、一人の子が前に来て絵本の上下の向きを変えるのです。そしてページをめくる度に向きを変えに来るのです。そこでお腹の中の赤ちゃんは下を向いている事、生まれてくるときは頭から生まれてくるから下を向いていることを話すと「ふ~ん、そうか」と納得。読み終わった後、みんなもお母さんのおなかの中にいる時、おへそとおへそが繋がっておへそのあなから栄養をもらったり、「きょうはなんのごちそうかな」においをかいだり、おとうさんやおにいちゃん、おねえちゃんがお腹の中の赤ちゃんに「げんきにうまれてくるんだよ、うまれたらいっしょにあそぼうね」と話かけていたことを感じていきました。そして赤ちゃんがおへその小さな小さな穴から、みたりきたいり、においをかんじたりして生まれてきたことを話すと、まるで自分が赤ちゃんになったようなほんわかとした表情をしていました。そんな子どもたちの顔を見て思わず宿題を出してしまいました。その宿題は、「おうちに帰ったら、おうちの人にみんながお腹にいるときどんなだった」って聞いてくること!です。

絵本から子どもの人権を考えるグループ “初めの一歩” 杉本 節子

おやおやじゅくへようこそ

おやおやじゅくへようこそ

1,365円

今回紹介の『おやおやじゅくへ ようこそ』は発刊されてほやほやの絵本です。
私は個人的にこの作者のファンなんですが、子どもや子育て中の親を愛している人の発想なんです。少し、おやおや塾の内容を紹介していくと『こどものおしごとは、さわる・なめる・やぶく・ひっぱる・たたく。それから二つ目は、なくこと!三つ目は、しっぱいすること!』と子どもの姿が出てきます。次に『おやのおしごとは、どうして体が大きいか、こどもをだっこするためです。そして二つ目はこどもの話を聞くこと!』という風に、大人が塾に行って先生である子どもに教わっていく展開になっているのです。実はこの絵本、ある保育士さんから「いい絵本がある」という連絡を貰い、話を聞いてぜひその実践を紹介したくなりました。以降その先生の原稿です。

 5月に初めて保護者が集まるクラス懇談会がありました。クラスの子どもたちの様子を伝え、1年間大事にしていきたい保育のねらいや取り組みの見通しを話す場で、この絵本『おやおやじゅくへ ようこそ』を紹介しました。子どもの様子や子どもの気持ちを代弁してくれるこの絵本の内容が、聞いている保護者や紹介している私たち保育者にもはっとさせられる機会になりました。後日感想を聞いていった所、「子どもが先生っていうのがおもしろかった」「子どもの仕事が泣くことだって、なんかホッとした」「子どもの泣く理由を聞くのが親の役割っていうのが印象に残った」「いろんな場面にグサッときて、反省します」「どれも思い当たるなあ」など本当にいろんな保護者の方の意見を聞けて、又話していける機会になりました。

 今回の原稿は豊中市立原田保育所の中永博子先生です。読者のみなさんでこのコーナーで紹介したい絵本の情報をぜひお寄せくださいね。

 絵本から子どもの人権を考えるグループ“はじめの一歩”杉本節子

「だるまさんと」「だるまさんの」

「だるまさんと」「だるまさんの」

893円

今回は様々な心模様の時に乳児さんの子どもたちに人気の絵本紹介。
『だるまさんと』『だるまさんの』の2冊です。以前“だるまさんが”を紹介しましたが、だるまさんの何ともいえない表情や思わずえっーとびっくりする展開、自分の身近な生活の共感など子どもたちが引き込まれます。ある子育て広場でのこと、いつも友だちにちょっかいをかけ「ごめんね」と謝りながら気にしているKちゃんのママが笑っています。
「もういっかい」「もういっかい」と要求を出す我が子の姿を目の当たりにしているからでした。この絵本は子どもたちの読んでほしい要求の強さからずーと継続したほどです。
 昨年このだるまさんシリーズの絵本を通して支援活動がうまくいった経験を得る事が出来ました。絵本グループのメンバーで検証したところ、①繰り返しの面白さ、②イチゴやバナナなど生活になじんだものや、め(目)・て(手)・は(歯)など身近な体の部位の楽しい登場、③友だちとのおもしろさの共感と共鳴、そしてなにより④この絵本を囲む雰囲気が子どもを尊敬する雰囲気を作ってくれます。読み手の柔らかさ、興味津々の子どもたち、ママたちの見守りの笑顔、これら一つひとつが“子どもたちが大事にされている”と感じ取れるひと時を育んでいることを、絵本活動の整理から見えてきたのです。

    絵本から子どもの人権を考えるグループ“はじめの一歩”杉本節子

「おふろのじかん」「かばくんとおとうさん」

「おふろのじかん」「かばくんとおとうさん」

先日、第13回大阪保育子育て人権研究集会の第6分科会 絵本~仲間をつなぐ・親子をつなぐ~に参加しました。そこで報告園から、私たち絵本グループの課題にあった活動のヒントをもらうことになり、嬉しくて12月の活動に取り入れたのです。その内容は保護者にも絵本の読み手になってもらったところ、お母さんにも子どもたちにも良かったという報告でした。
 早速、子育て広場に参加のお母さんに読み手になってもらいました。お母さんの表情から、「私 読みましょうか」というサインを送ってくれる人もいた位です。絵本は1~2歳児向けで、子ども達の生活で身近なもの、遊びで共感できるものをテーマに選びました。はじめのお母さんが、「おふろのじかん」の絵本を読み始めると本当にどの子も「なんだろう」と集まってきて夢中になってみているのです。読み手の親子も、見ている親子も主人公のトントンがお風呂に入って洗ってもらう様子をまるで自分が洗ってもらうように気持ちよさそうな表情です。2人目のお母さんは「かばくんとおとうさん」の絵本を読んでくれました。かばくんのおかあさんが出かけてしまい、お父さんが朝ごはんにおにぎりを作ってくれることに、と話は続きます。ページをめくる度に、その出来事1つひとつが子どもたちに共感できる内容で、楽しそうに親子の笑い声が聞こえます。 
 その後、親子で1冊ずつ手にとって読んでもらう場面を設けました。親子のペアーが引き寄せられるようにして特別の空間ができ、あちことで絵本を真ん中に何ともいえない心地よさが広がりました。お陰さまでいい勉強の場に出て本当によかったです。

ゴリラのパンやさん

ゴリラのパンやさん

1,260円

保育も後半に入り、友だちとの関係も深まってきた頃ですね。子どもたちと一緒に考えたいなと今回紹介の「ゴリラのパンやさん」をある保育所の5歳児クラスで読みました。森でゴリラがパンやさんを始めました。でもゴリラの大きい声や、こわい顔〔外見〕に買いに来た動物たちは逃げてかえってしまいます。ゴリラは困りましたが、声を変えたり、指人形をしたりして色々と工夫を凝らしてみます。すると少しずつお客さんが増えてきたというお話です。
 さて、子どもたちに「初めどうして買わないで逃げたのかな」と聞いてみると「だってかおこわいいし、おおきなこえやったから」。次に「でもうさぎは怖がらなかったね」と聞いていくと、「あのな、ゴリラさんにたすけてもらったからや」「そうや、きつねおっぱらってくれた」とよくみていたつぶやき。ここで「人権保育のための絵本ガイド」を活用して「じゃあね、もしみんなのお母さんがゴリラのパンやで買ったらダメっていったらどうする?」と聞いてみると、すぐに何人かの子が「J、かいにいかない」「かわない、かわない」と反応してくる。その時横から、「Yは、おいしかったらかいにいく!」とY。すると「Kも、おいしかったらかいにいく」と共感。言葉では出ないが“外見じゃないよ”という感じが伝わりました。
 最後に、「もし、みんながゴリラだったらどうする?」と聞くと、「パンかってほしい」「にげられたらかなしいわ」「にんぎょげきとかしてくれて、ゴリラさんやさしい」など活発に意見が出てきました。大人の投げかけ方でこんな風に反応が変わって驚きますが、絵本を通してこんなやり取りが子どもたちにとってとても貴重な体験だなと感じています。

ちょうどいいよ

ちょうどいいよ

1,300円

今回紹介の絵本「ちょうどいいよ」が、 成長の節目真っただ中の3歳児にぴったりの絵本です。ページをめくると、ちっちゃな帽子を見つけ“もうはいらない”と大きくなったゆりやんが登場。3歳児 クラスの子どもたちは目をぱちくりして共感の雰囲気。ゆいちゃんは周りの大人からは「大きいから小さい子にやさしくね」とか、ママに抱っこしてもらったら 「ゆいちゃん重くなったね、大きくなったね」と言われるけど、パパが抱っこしたら「まだ軽いぞ、ゆいは小さいもんな」と言うし、お料理のお手伝いをしょう としたら「もう少し大きくなってからね」と言う。もう、ゆいちゃんは大きいの?小さいの?3歳児の子どもたちは、場面がかわるごとに「S、大きくなったも ん」「Kのママもおもくなったっていう」など隣の子とつぶやいています。絵本を止めて、「ねぇ、くまぐみさんの子どもたちは大きいの?小さいの?」と聞い てみると、声をそろえて「おおきい!」と返ってくるので思わず笑ってしまいます。
次のページに子猫を抱っこしている場面と、大きな犬に触れないゆいちゃんが出てきました。
すると4人の子どもたちが向き合って、「なあ、おおきいいぬさわれる」「H、ようさわらんわ」「C、さわれるで、だってC、おおきいもん」「K、こわいか らさわれない」と絵本の場面から、今の自分たちは大きいの、小さいのと考えている姿に驚きました。最後に「ゆいちゃんは大きいの、小さいのと考えている姿 に驚きなした。
 最後に「ゆいちゃんは大きいと小さいの真ん中で、ちょうどいい大きさだね」という場面があって、今の3歳児そのままを認められた心地よさが伝わり、“自分たちは大きいもん”とちょっぴり自信を持った子どもたちの顔がありました。

ぼくがあかちゃんだったとき

ぼくがあかちゃんだったとき

1,260円

4~5月を新しい環境で過ごし、少しずつ慣れてきた子ども達は、いま自分や周りの友達をどんな風に見つめているのでしょうか。この1年、子 ども達の仲間関係を対等な関係にしていく手がかりに、保育の展開のなかで客観的に自分たちの姿を重ねていける絵本の紹介をしていきたいと思っています。自 分が大事にされている実感をこの時期に育んでいきたいですね。

今回のテーマは“自分が大事にされている”1です。

「ぼくがかあちゃんだったとき」は6歳の誕生日を迎えたぼくとパパのお話です。
誕生日にぼくをひざに乗せて、生まれた時からの色んな話を、パパの実感から話してくれます。
ページをめくるごとにパパの感動や心配や困った事などが出てきて、絵本のなかに引きずり込まれます。
子ども達は絵本の中の赤ちゃんになった気持ちで、「あのな、ぼくの赤ちゃんのときな、いちばんかわいかった。ママがいうとった」「ぼくな、ママのおなかのなかでまるまっててん」と口々に話してくれます。ジェンダーの視点からもお勧めです。

てをつないでごらん

てをつないでごらん

1,365円

もう1冊「てをつないでごらん」は短編です。手をつなぐ心地よさ、温かさが絵本を聞いている子ども達にも、読んでいる大人にも、また帰りにおうちの人と思わ ず手をつないでみたくなる絵本です。ケンカをしていた友達とも仲直しして、手をつないだ時の嬉しさが伝わります。「ぼく、ママと手をつないだことないね ん」とタロウくん。ママと手をつないだきっかけに、この絵本がなったらいいな。

絵本から子どもの人権を考えるグループ
“はじめの一歩”  杉本 節子

ページ上部へ

特定非営利活動法人ちゃいるどネット大阪

大阪市中央区法円坂1-1-35
TEL : 06-4790-2221